ドローンを都市上空など有人地帯で目視外飛行させることができる(レベル4)の実現が目の前に迫っています。2020年3月31日「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」は、2022年度を目途とするレベル4実現に必要な制度設計の基本方針を「小型無人機の有人地帯での目視外飛行実現に向けた 制度設計の基本方針」(案)として公表しました。
「空の産業革命」は、いよいよ具体的な整備段階に入ったと言えそうです。都市の物流をはじめ、イベント警備や災害時の避難誘導、消火活動の支援、都市部のインフラ点検など、街中を飛び交うドローンはすぐに馴染みの光景になるかもしれません。
そんな新時代のドローンにどんな機能が求められるのか見ていきましょう。

参考記事
関連記事

2022年に向けて、着実に進む法整備

都市部での目視外飛行では、墜落など事故における被害は大きく、高い安全基準を担保する法整備が始まっています。指針では機体の安全性確保、操縦者・運航管理者の技能確保、運航管理に関するルール等とともに、所有者情報把握(機体の登録・識別)を急ぎ取り組む項目として挙げており、その一部はすでに運用が始まっています。

もう始まっている飛行ルールの厳格化

例えば、2019年4月23日よりオンラインサービスを開始したドローン情報基盤システム(飛行情報共有機能)は、航空機と無人航空機間のニアミスを防止するために設けられたもので、当初登録は任意でした。
しかし「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」の改正で、2019年7月26日付以降、航空法に基づく許可・承認を受けてドローンを飛行させる場合は、事前に同システムに飛行予定情報を入力するよう義務付けられました。また、2020年3月26日以降に新たに航空法に基づく許可・承認の申請を行う際には、無人航空機の所有者情報を申請書に記載しなければならなくなりました。

参考記事
関連記事

ドローン操縦も免許制に

ドローンを操縦している画像

2022年度を目処に、いよいよドローンにも操縦免許制度が導入されそうです。指針では、操縦するドローンの機体種別や飛行方法、免許取得の年齢制限、有効期間、身体要件等による操縦制限を設けたり、行政処分等の罰則の設定を掲げたりしています。
また、免許の認定を民間に委託するなど、ドローン免許は自動車免許とよく似た性質の制度になると考えられます。ドローン操縦免許、機体登録制度、機体の整備点検の厳格化など、ドローン運用時の責任の所在が明確化されることになります。

参考記事

レベル4社会、ますます重要視されるドローンの安全性能

レベル4社会のイメージとして荷物を抱えて都市上空を飛ぶドローンの姿が思い浮かぶだけに、何より安定した飛行制御能力が重要となります。

求められる高度な測位性、衝突回避や緊急着陸性能の向上が不可欠

指針では飛行制御の重要性を以下のように指摘しており、システムやルール整備を様々な視点から検討していくことが重要であると記されています。

「複数の事業者の機体が高密度で自律的に飛び交い、都市部を含む広域的な拠点間の荷物配送などを行うより高度なレベル4の実現のためには、広範囲において飛行する可能性のある航空機・無人航空機の飛行計画調整や動態情報の共有等をUTM等のシステムにより円滑化、さらには自動化していくことが一層重要になると見込まれる。そのためには、航空機・無人航空機間の自律的な衝突回避技術等の開発や、航空機と無人航空機における空域の利活用の在り方整理などを検討していく必要がある」

引用: 小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会(第13回) | 首相官邸ホームページ

非GPS環境下で高性能な自律飛行性能を発揮するARマーカー方式

レベル4時代になっても、航空機との抵触を考慮すると、ドローンの飛行航路は主に低空域となることでしょう。そのため、ビル影や通信設備などに起因する電波の減衰や電波干渉を受けたり、GPS受信が不安定なエリアの通過を余儀なくされたりすることが心配されます。
電波状況に左右されない飛行制御方式として自己位置推定と環境地図作成を同時に行うSLAMがありますが、高価格が課題です。

その点、マーカーによる飛行制御の場合は設備投資が少なく導入できます。
弊社のARマーカー方式は、GPSに代わってドローン搭載カメラで壁に貼った簡易マーカーから位置情報や上下運動、左右旋回、衝突回避などさまざまな飛行指示を読み取り自律飛行するものです。位置確認用マーカーは認識性が良く、簡単に制作でき、ドローンもホビー用から利用可能です。また、ARマーカーであるため、マーカー貼り替えることなく飛行命令の内容変更がきるので、ランニングコスト面でも、同じマーカー方式で比較してARマーカー方式の方が、コストを軽減できます。

関連記事

マーカー制御のメリットとは?

こうした価格的なメリット以上に注目されるのが、マーカー制御方式によって、ドローンの本格的な商業利用時における技術的課題の多くが解決されそうだということです。

ドローン配達、ドローン点検、多くの課題を解決

レベル4におけるドローンの技術開発を担当している国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、輸送・物流における技術課題として次の7項目を挙げています。

  • 飛行経路の設定
  • バッテリ残量や天候による飛行状況などから飛行可能距離を自動確認
  • 衝突回避
  • 操作用電波遮断時の対応
  • 悪天候時安定飛行
  • 異常時安全飛行ルート自動生成・自律飛行
  • 自動着陸の精度

特に都市部のドローン配達では、従来の物流同様、配達先までのラスト・ワン・マイルがネックです。ビル影や高架下など、電波干渉やGPSの利用が困難なエリアを飛ぶこともあるでしょう。きめ細かい空路管理も課題です。

マーカー方式は、カメラで取り込む情報であるため、飛行経路はマーカーに指示に誘導、設定されます。トンネルやビル影などGPSが利用できないエリアであっても、プロポの電波が届かない遠距離であっても、ドローンは確実に自律飛行を続けることができ、操作用電波遮断時の対応も完璧です。
物品の配達地点としてマーカーを表示すれば自動着陸の精度は非常に高いものとなります。すべてのドローンがマーカーで制御されるなら、交通ルールをマーカーに設定しておくことで衝突回避も可能です。
マーカーによる制御技術の研究が進めば、ドローンの飛行能力に依存する悪天候時安定飛行のほかは、すべて解決できるのではないかと夢は膨らみます。

ハッキリとした特徴のある形であれば、なんでもARマーカーとして利用可能です。ビルや銅像などをマーカーとして利用すれば、街の景観を確保しながらドローンの飛行をきめ細かく制御することもできます。このほか、トンネル内の点検調査、工場建屋内の巡回警備、温室内の作物の生育状況の監視など、非GPS環境下で利用できるドローンがビジネスチャンスを大きく広げます。

参考記事
関連記事

未来を開くのは工夫と技術

レベル4の社会到来を間近に、ドローンの用途はますます広がるばかりです。弊社は、次世代の糧となる3Dデジタルデータのドローンセンシングによる取得と解析が得意な会社です。
クライアントのニーズに応じて最適なソフトウエアを受注開発いたします。記事で紹介したように、非GPS環境下でのドローンの自律飛行は本来、多大な投資が必要です。
そうした金額的に導入困難と思われる運用でも、工夫と技術でコスト削減しながら高品質な成果の提供に挑戦するのが弊社の企業姿勢です。ドローンの活用方法やデータ解析に関する課題や疑問などがあれば、お気軽にお問い合わせください。