2015年ごろより急速に普及してきたドローンですが、物流業界への活用なども報道で大きく取り上げられることが増えてきました。一方で、飛行してはいけない場所で飛行したことで書類送検されるといった事例も出てきました。
ビジネスにおける輝かしい一面だけでなく、こうした“負”のイメージを強くお持ちの方も多くいらっしゃるかと思います。
2015年4月には首相官邸への墜落事件、翌月には善根寺ドローン落下事件は大きく報道されたこともあり記憶に残っている方も多いかもしれません。
こうした事件の影響もあり、2015年12月10日の航空法改正により、無人航空機(ドローンやラジコン機等)の飛行ルールが新たに導入されました。
今回はこの改正航空法について、具体的にどのような規制なのか ビジネスで活用する上でも理解が必須となるポイントを詳細に解説します。
改正航空法の概要
法規制の対象について
今回の法改正により対象となる無人航空機は、「飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの(200g未満の重量(機体本体の重量とバッテリーの重量の合計)のものを除く)」です。いわゆるドローン(マルチコプター)、ラジコン機、農薬散布用ヘリコプター等が該当します。
上記国土交通省による航空法についての記載の通り、、「ドローン」や「マルチコプター」と呼ばれるものすべてが航空法の対象となる訳ではありません。
航空法の対象となる機体とそうでない機体の違いは「重量」です。
<機体重量が200g未満の場合>
バッテリーを含めた重量が200g未満のドローンは無人航空機の飛行ルールの対象とはならず、従来からの航空 法の第99条の2の規制(空港等周辺や一定の高度以上の飛行については国土交通大臣の許可等が必要)のみ適用されます。
また、機体重量が200g未満であっても小型無人機飛行禁止法の対象となるため、国が定める重要施設周辺を無許可で飛行することができません。
<機体重量が200g以上の場合>
バッテリーを含めた重量が200g以上のドローンは無人航空機の飛行ルールの対象となります。
許可が必要になる場所
無人航空機の飛行の許可が必要となる空域について
以下の(A)~(C)の空域のように、航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれのある空域や、落下した場合に地上の人などに危害を及ぼすおそれが高い空域において、無人航空機を飛行させる場合には、あらかじめ、国土交通大臣の許可を受ける必要があります。
(A)空港等の周辺の空域
空港等の周辺の空域は、空港やヘリポート等の周辺に設定されている進入表面、転移表面若しくは水平表面又は延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域、(進入表面等がない)飛行場周辺の、航空機の離陸及び着陸の安全を確保するために必要なものとして国土交通大臣が告示で定める空域です。
(B)地表又は水面から150m以上の高さの空域
地表又は水面から150m以上の高さの空域を飛行させる場合には、許可申請の前に空域を管轄する管制機関と調整をおこなってください。
(C)人口集中地区の上空
人口集中地区は、5年毎に実施される国勢調査の結果から一定の基準により設定される地域です。当該地区の詳細については、総務省統計局ホームページ 「人口集中地区境界図について」をご参照下さい。
(A)空港等の周辺の空域、(B)地表又は水面から150m以上の高さの空域での飛行が規制されているのは、航空機との衝突を避けるためです。そして(C)人口集中地区の上空は一般市民との衝突などのトラブルを避けるためです。
自動車や電車などと違い、ドローンには”道”がありません。空という空間を自由に行き来できることが強みであると同時に、想定しなければいけないリスクが複数あるため、このような規制が制定されています。
規制対象エリアの確認方法
人口集中地区についてはjSTAT MAPで確認できます。
なお、空港等の飛行禁止空域・人口集中地区・飛行可能施設などについて、分かりやすく表示されるドローン専用飛行支援サービス(SORAPASS)などがあります。
これらの飛行禁止区域をまとめた情報は随時更新がされます。飛行させる場所およびその周辺について小まめな確認を実施することを推奨致します。
遵守事項と許可が必要になる条件
(2) 無人航空機の飛行の方法
飛行させる場所に関わらず、無人航空機を飛行させる場合には、以下のルールを守っていただく必要があります。
※令和元年9月18日付けで[1]~[4]のルールが追加されます。
- アルコール又は薬物等の影響下で飛行させないこと
- 飛行前確認を行うこと
- 航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するよう飛行させること
- 他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させないこと
- 日中(日出から日没まで)に飛行させること
- 目視(直接肉眼による)範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行させること
- 人(第三者)又は物件(第三者の建物、自動車など)との間に30m以上の距離を保って飛行させること
- 祭礼、縁日など多数の人が集まる催しの上空で飛行させないこと
- 爆発物など危険物を輸送しないこと
- 無人航空機から物を投下しないこと
<遵守事項となる飛行の方法>
上記[5]~[10]のルールによらずに無人航空機を飛行させようとする場合には、あらかじめ、地方航空局長の承認を受ける必要があります。
<承認が必要となる飛行の方法>
<※捜索又は救助のための特例について>
上記の(1)及び(2)[5]~[10]の飛行ルールについては、事故や災害時に、国や地方公共団体、また、これらの者の依頼を受けた者が捜索又は救助を行うために無人航空機を飛行させる場合については、適用されないこととなっています。
一方、本特例が適用された場合であっても、航空機の航行の安全や地上の人等の安全が損なわれないよう、必要な安全確保を自主的に行う必要があることから、当該安全確保の方法として、以下の運用ガイドラインを当局として定めていますので、特例が適用される機関や者については、本運用ガイドラインを参照しつつ、必要な安全確保を行うようにして下さい。
いずれも決して難しい話ではなく、「ドローンがどんな風に使われたら危険か」を考慮すれば納得できるものではないでしょうか。
自動車には運転免許がありますが、ドローンには免許制度というものは存在しません。しかし、自動車同様に適切な運用をしなければ”事故”というリスクがある点では共通しています。
そうした事故を未然に防ぐために、こうしたルールが制定されています。
残念ながら改正航空法の施行後、こうしたルールを守らずに書類送検・逮捕された事例が複数あります。
「知らなかった」では済まされないため、十分に注意しましょう。
規制の対象となる飛行を行う場合、どうすればいいのか
許可申請の手続を行いましょう。
国土交通省の様式にしたがって、オンライン申請、郵送及び持参のいずれかの方法により申請が可能です。
弊社では郵送とオンラインでの申請経験がありますが、オンライン申請が最も効率的であるため、オンライン申請の利用を推奨します。
許可申請における注意事項
航空法第132条に定める「飛行禁止空域」における飛行や同132条の2に定める「飛行の方法」によらない飛行を行おうとする場合、飛行開始予定日の少なくとも10開庁日前までに、申請書類を提出してください。ただし、申請に不備があった場合には、審査に時間を要する場合もあるため、飛行開始予定日の10開庁日前からさらに、期間に相当の余裕をもって申請してください。
※急な空撮依頼への対応など、業務の都合上、飛行経路が決定してから飛行させるまでに手続きを行う期間が確保できない場合には、飛行場所の範囲や条件を記載することで飛行経路を特定せずに申請を行うことも可能です(飛行の経路の特定が必要な飛行を除く)。申請にあたっては以下の申請書記載例を参照下さい。
※一部の申請書において、安易な添削希望として送付される場合や、申請内容に空白が多いもの、申請上必要な事項が未記載又は必要な資料が添付されていない等、不備が多くみられる場合があり、審査に多大な時間を要し、他の申請書の審査に遅れが生じてしまう場合があります。
つきましては、申請先に申請書を送付される前に、未記載事項や不足資料がないか、また、記載内容等が申請書記載例に準拠したものであるかを今一度ご確認していただきますようお願いいたします。
上記の通り、許可申請は「申請したらOK」というものではなく承認を得る必要があります。承認には一定の時間を要するため、必ず計画的かつ飛行日程に対して余裕を持って許可申請を行いましょう。
なお、許可申請・承認を得るにあたり、10時間以上のフライト経験が必須となることが重要なポイントです。
申請さえすれば誰でも許可を得ることができる、というものでは決してありません。
令和元年11月29日付けで、 「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」が改正されました。条件を満たした場合に限り、10時間の飛行経歴に代えることが出来ます。
詳細については 「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」をご参照ください。
許可を得ずに飛行した場合はどうなるのか
国土交通省の許可を得ずに、航空法の対象となる場所や飛行条件でドローンを飛行させた場合、50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
昨今では外国人観光客らによる無許可での飛行などのトラブルも後を絶ちません。墜落による人的被害などを避けるために法規制が存在し、正しく安全に運用できると判断された者に許可が与えられます。「知らなかった」では済まされず、「申請なんて面倒だ」では取り返しのつかない事態になりかねません。
自動車は便利であると同時に危険であるがために、ルールが制定され運転免許というものが存在します。ドローンには法的効力を持つ免許のようなものは存在しませんが、自動車と同様の考えとして航空法および許可という仕組みが存在します。
必ず正しい知識を身につけ、正規の手段をとってドローンを運用する必要があります。
屋内での飛行は規制対象となるのか
屋内での飛行は無人航空機の飛行ルールの対象とはなりません。人口集中地区であっても夜間飛行であっても、屋内飛行であれば飛行可能です。無人航空機の飛行ルールの違反とはなりません。
Q5-4 人口集中地区であって、集中地区であって、屋内で飛行させる場合も許可は必要ですか。
A 屋内での飛行は、航空法規制対象外となることから許可不要です。
ただし、当然のことではありますが屋内の飛行であっても、以下のような点に該当する場合は飛行することができません。
- 施設などの管理者により飛行が禁止されている場所
- 他者が管理する施設での無許可の飛行
無人航空機の飛行ルールに違反していない場合でも、自治体や他者によって飛行が禁止されている可能性があるため十分に注意してください。
改正航空法の理解度チェック、図で見るケーススタディ
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人口集中地区に該当しない私有地で飛行する
答)申請は不要です。しかし、飛行する機体と第三者の物件の距離が30m未満である場合には申請が必要となります。必ず事前に確認を行ってください。
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人口集中地区に該当する私有地で日中に飛行する
答)申請が必要です。私有地であっても人口集中地区で飛行する場合には申請対象となります。
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人口集中地区に該当しない私有地で、夜間に飛行する
答)申請が必要です。私有地であり、かつ非人口集中地区であっても夜間に飛行する場合には申請対象となります。 -
人口集中地区に該当する屋内施設で飛行する
答)申請は不要です。人口集中地区に該当していても屋内での飛行は無人航空機の飛行ルールの対象となりません。ただし、自治体の条例や屋内施設の管理者などにより、飛行が禁止されている可能性があります。必ず事前に確認を行ってください。
200g未満のドローンであればどこでも飛ばせるのか
繰り返しにはなりますが、非常に多くの方が勘違いされていることです。200g未満のドローンであっても飛行できない場所は存在します。
2016年4月7日には国が定める重要施設付近でのドローン全般の飛行を禁止する、小型無人機等飛行禁止法が施行されました。
機体の重量等に関係なく、国が定める重要施設付近を飛行することが禁止されます。
国会議事堂、内閣総理大臣官邸その他の国の重要な施設等、外国公館等及び原子力事業所の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律(平成28年法律第9号。以下「本法」という。)第8条第1項の規定に基づき、以下の地図で示す地域(対象施設の敷地又は区域及びその周囲おおむね300メートルの地域:「対象施設周辺地域」)の上空においては、小型無人機等の飛行を禁止されています。
本法の規制の対象となる小型無人機等とは、次のとおりです。
- 小型無人機(いわゆる「ドローン」等)飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他の航空の用に供することができる機器であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの
- 特定航空用機器 航空法(昭和27年法律第231号)第2条第1項に規定する航空機以外の航空の用に供することができる機器であって、当該機器を用いて人が飛行することができるもの(高度又は進路を容易に変更できるものとして国家公安委員会規則で定めるものに限る。)
※特定航空用機器に関する規定は、5月下旬頃の施行を予定しています。そのため、現在のところ、本法に基づく規制の対象にはなっていません。
ただし、
- 対象施設の管理者又はその同意を得た者が当該対象施設に係る対象施設周辺地域の上空において行う小型無人機等の飛行
- 土地の所有者若しくは占有者(正当な権原を有する者に限る。)又はその同意を得た者が当該土地の上空において行う小型無人機等の飛行
- 国又は地方公共団体の業務を実施するために行う小型無人機等の飛行 については適用されません。
この場合、小型無人機等の飛行を行おうとする者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、その旨を当該小型無人機等の飛行に係る対象施設周辺地域を管轄する警察署を経由して都道府県公安委員会に通報する必要があります。警察官等は、本法の規定に違反して小型無人機等の飛行を行う者に対し、機器の退去その他の必要な措置をとることを命ずることができます。また、一定の場合には、小型無人機等の飛行の妨害、破損その他の必要な措置をとることができます。
なお、上記に違反して、
- 対象施設及びその指定敷地等の上空で小型無人機等の飛行を行った者
- 法第9条第1項による警察官の命令に違反した者 は、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に処せられます。
あとがき
今回ドローンの法規制について、最低限の情報を抜粋しただけでも、これだけの情報量となりました。 一朝一夕で身につけることは難しいこともご理解いただけたかと思います。
これらの内容について学習し、実際に申請を行うのには膨大な時間と学習が必要となります。 ドローンスクールに通う、講座を受講するといった選択肢が昨今では主となっていますが、ドローンの導入を検討する段階でこうした選択肢を取ることは非常に難しいでしょう。
「ドローンを使ってこんなことをしたいが、そもそもできるのか」そうした疑問点を抱える方にとっては、実績を有する専門家への相談することが近道となります。
どんな場合に申請が必要なのか、どのように申請を行うのか、その他ご不明な点について実績を有する弊社へ是非ご相談ください。
ご相談の際は、当サイト内のお問い合わせフォームもしくは電話番号より、お問い合わせください。
以下のリンクにて弊社の飛行実績や許可申請の実績の一部掲載、その他ドローン運用における注意事項等の記事も掲載しています。こちらもぜひご覧ください。