ドローンは、従来の災害救助現場で活用されてきたヘリコプターと比べると、狭いスペースでも離着陸が可能で操縦が容易なため、災害現場の確認や行方不明者の捜索、救助支援機材として導入が進んでいます。
これまでは、空撮による捜索が主要な用途でしたが、現在ではドローンの”空飛ぶセンサー”としての有用性が注目されています。ドローンに搭載するカメラやセンサーの種類に応じて多様なデジタル・データが取得でき、解析するソフトとの組み合わせで、従来困難であった瓦礫の中からの遭難者の検出や、安全な救助ルートマップの作成を容易にできるようになるからです。
防災におけるドローンの可能性をセンシングの観点から紹介します。
災害、被害状況把握や行方不明者捜索に最適なドローン
2016年の熊本地震や2017年7月の九州北部豪雨は、災害現場の状況確認にドローンが活用された初期の事例としてよく取り上げられています。
向上するドローンの機体性能。高まる耐水性や耐寒性
内閣府の資料によると、2017年7月の九州北部豪雨の調査で用いられたドローンの機体はImPact田所プログラム全天候型ドローン(自律制御システム研究所)と呼ばれる機体で、降雨量100mm/h、風速10m/sまで活動可能。時速60km/hで25分間飛行でき、10km先まで広範囲な調査が可能。搭載した高解像度カメラ映像で、被災現場の状況を3次元立体映像で再現可能といった高性能なものです。
取得撮影データをリアルタイムに電子地図上で更新、情報共有に効果
2018年度版防災白書は、このドローンを用いた調査について「人の立ち入れない福岡県朝倉郡東峰村の災害現場の空中からの写真や動画撮影を行い、これらの情報を速やかにSIP4D(災害情報共有システム)上にアップロードして交通規制や避難所の開設状況情報等をリアルタイムに電子地図上で更新した。
これらの情報については、警察、消防及び自衛隊等の関係機関において活用されたほか、災害対策本部等に地図を配布することにより、2017年7月8日以降、行方不明者の捜索活動にこれらの情報が活用され、現地の災害対応に貢献した」とコラムで取り上げています。
高性能な機体とセンサーで取得したデジタル・データと他の情報との速やかな連携や共有化の重要性を示す例だと言えます。
被害状況の確認に役立つ撮影手法を国が公開
国土交通省 東北地方整備局は、2016年の台風10号でドローンを用いて実施した被災状況調査を主な題材として、ドローンの撮影手法に関して得られた知見をまとめた「ドローンを用いた被災状況動画撮影のポイント集」(2018年6月)を公表しています。
早期復旧や被害の拡大防止等の検討のために行う、社会資本の被災状況の迅速な把握を目的とした動画撮影に特化した内容です。
現地準備としてロケハンや対地飛行高度や上昇可能な高度、飛行可能な距離飛行経路などの飛行技術、カメラやジンバルの品質、カメラアングルや構図の捉え方までポイント別に分かりやすくまとめたもので、ドローン動画の撮影ハウツーものとしても興味深い資料です。
防災におけるドローンのセンシングの可能性とは?
現状の防災におけるドローン活用の多くは「空撮」によるものです。飛行しながら何かをチェックする場合、ドローンの小さいモニターで状況把握をしなければなりません。たとえ、現地で大型モニター接続できたとしても、散乱する瓦礫の中に紛れた被災者を見つけ出すことは、困難を極めるでしょう。
撮影後にどこかへデータを持ち帰ってチェックするにしても、空撮に1時間かかったなら、映像のチェックにも同等の時間がかかります。また、チェックする人がどれだけ気づくことが出来るか、という個人の能力によって結果が左右されてしまうなど、数多くの課題があります。
ドローンは空飛ぶカメラと言われますが空飛ぶセンサーという見方をすれば、搭載するセンサーと取得したデータの解析ソフトとの組み合わせで、ドローンを有効に活用できる可能性が大きく広がります。
赤外線センサーで、昼夜の別なく捜索が可能に
人命救助は時間との勝負。夜間でも捜索が続けられれば、助けられる命を少しでも増やせるはずです。
赤外線センサーを搭載したドローンを捜索や救助活動に活用しようとするアイデアは古くからあり、各地で訓練が実施され、実績が積み上げられています。
今年1月にDJI社が発売した「MAVIC 2 ENTERPRISE DUAL」は、可視光を捉える4Kセンサー(カメラ)と、サーマル画像データを捉える赤外線カメラを一つのユニットに収容したドローンです。
可視光カメラデータを赤外線カメラのデータにリアルタイムで統合する機能があり、肉眼では困難な対象物の発見を容易にします。また、夜間や霧、煙の立ち込める日中の複雑な環境下でも飛行させることができます。
センサー追加による機体の行動領域拡張の可能性を顕在化した好例と言えるでしょう。
リアルタイムで進行できる地図作成で、迅速な安全な被災地支援計画が可能に
空撮による現場状況の確認に活用されるドローンですが、そうした写真から、航空写真測量の技術を応用して、精密な地図を作成したり、崩落した土砂の量などを推定したりすることができます。
災害初期段階では、捜索や救助、孤立した孤立した被災地への安全な資材搬入路を検討など、リアルタイムで詳細な地図が必要になります。
これまでのマッピングは、データを持ち帰ってコンピュータ処理をしなければなりませんでしたが、ドローンが飛行しながら地図をリアルタイムで作成、すぐにタブレットやスマホ上で利用できるサービスも始まっています。
復旧活動においても、ドローンの活躍の場はさらに広がると思われます。復旧工事のためには測量が不可欠ですが、浸水や崩落など人の立ち入りが困難な現場状況が容易に予想されます。
そんな時こそドローンの活躍の場と言えるでしょう。レーザースキャナを活用すれば、建物や橋梁の状態をより正確に把握できますし、赤外線センサーを搭載したドローンを定期的に飛行させれば、農作物の回復状況が確認でき、経営計画策定に貢献します。
ドローンは空飛ぶセンサー、支援ソフト連携で広がる用途
ドローンに搭載されたセンサーが取得したデジタル・データをいかに迅速に処理し、関係者の間で共有できるかは、防災に限らずどの分野においても業務の省力化・効率化の要です。
それだけに、ソフトウェアの導入が不可欠です。人の捜索であれば、動画像の中から「人」と思わしきものを検出するソフトウェアの開発が必要です。
被害状況の把握であれば、事前に撮影した被災地の空撮映像と被災後の空撮映像と重ね合わせたり、土砂崩れの被害範囲把握や流失土砂の容積を積算したりするなど、より高度なセンシングと解析ソフトが必要になります。
弊社は、既製のソフトウェアのパッケージ製品やカスタマイズは取り扱っておりません。弊社はユーザー企業のニーズをとことんお聞きし、そのニーズに応じたソフトウェアのワンオフ開発・提供を行っております。やりたいと考えていることがあれば、実現できるかどうかわからないことでもまずはご相談ください。