いよいよ2020年、わが国でも次世代高速通信5Gが本格的にスタートします。利用が始まれば4K、8Kなどの高精細映像の送受信や重機などの遠隔操作時の遅延が解消できるようになり、本格的なi-Construction時代が到来します。

i-Constructionとは国土交通省が掲げた生産性革命プロジェクトの一つで、建設現場にICT(情報通信技術)を導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図る取り組みのこと。その中で、作業のスマート化の基礎となるのがドローンなどを用いて取得する3D点群(Point cloud)データです。そこで、3D点群データとは何か、その取得方法、用途についておさらいしていきます。

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3D点群データとは?

3D点群データ

3D点群データはその名の通り、天地左右の3次元位置情報を持った点の集合体のことです。

リアルとバーチャルを繋ぐ3Dデータ

地形や建物を3Dスキャナで読み取り、仮想空間上でデータが持つ位置情報に基づいて付置された点の集合が3D点群データです。こうしたデータで形成された計測対象物の立体イメージに、テクスチャを貼ることでコンピュータ上に実物さながらの3Dモデルをバーチャルイメージとして再現できます。計測精度が高いほど、点の密度が濃くなり、出来上がるモデルの精度は向上します。さらに3D点群データに測位情報を与えることによって、バーチャルモデルは現実世界とリンクします。自動運転はそうしたデータの利用例です。

これまで広域開発をする場合、一般の人にもわかりやすくするために、説明資料としてパース図や模型を制作していました。3D点群データを利用すれば、こうした説明ツールの代わりにデジタル3Dモデルを容易に作成できます。一旦、現状をスキャンして3D点群データ化しておけば、設計データから作成したインフラや建物を3Dモデル上に追加することで、地上からでも上空からでもさまざまな視点から眺めることができたり、日当たりなど建設物による環境の変化を簡単に確認できたりする説得力の高いツールとなります。3D点群データは、現実と仮想世界の絆として期待されています。

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2D写真から3Dデータを取得

従来、建設現場など広域の測量には空中写真測量が用いられてきました。空中写真測量は、上空から一定の割合で被写体が重複する連続写真を撮影します。それら2D写真からステレオ写真の原理を用いて作り出した立体イメージの中から特徴点を3Dデータとして選び出していきます。予め写真の方へ測量で確認した位置にマーカーを写し込んでおけば、地図上にデータを展開することもできるようになります。

これまでの空中写真測量では、有人航空機に搭載したカメラやレーザースキャナが用いられてきました。航空機の手配の手間や価格の問題でハードルの高い手法でしたが、ドローンの登場で利用環境は一変しました。ドローンなら事前準備に手間取らず安価に実施でき、優れた測位性能による自律飛行で精度の高いデータが取得できるためです。国土地理院はこうした利点を公式に活用するため「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」を公表。測量現場でのドローン利用を大きく推進しました。

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3D点群データは近未来社会の糧に

国土交通省が推進するスマートシティは、自動運転などの新技術による社会的課題の解決や、誰もが安全・安心して快適な暮らしが送れる循環型の地域づくりを目指すものです。その基礎となり、未来の糧となるのが3D点群データです。

3D点群データを利用者に無料公開する静岡県狙いとは

静岡県は、3次元点群データを用いた仮想の3次元プラットフォーム(VIRTUAL SHIZUOKA)を構築することを目指しています。その手始めとして、全国に先駆けて3次元空間情報データベース(Point Cloud DB)を構築、同県内の道路や地形などの3D点群データを収集して、一般公開しています。蓄積されたデータは、防災をはじめ交通支援やインフラメンテナンス、観光など幅広い分野での活用が推進される予定です。

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自動運転やインフラ維持管理への活用が狙い

その具体例を、静岡県のスマートシティを支える3Dプラットフォーム(VIRTUAL SHIZUOKA)構築の提案の中から紹介しておきましょう。

同県も少子高齢化の中で、過疎地域などの移動手段の確保が課題です。そこで、自動運転を可能にする3D点群データを基に高精度3D地図(ダイナミックマップ)の整備を進めています。自動運転のデマンドタクシーは、買い物難民の解消だけでなく観光客の移動支援も狙いです。

静岡県は、南海トラフ巨大地震や伊豆東部火山群など自然災害への対処も大きな課題です。ハザードマップの高度化(VR、AR等の活用) や危険地帯の発見、災害前後の地形データ比較による被災時の迅速な状況把握と復旧活動などの防災利用、道路や橋梁施設などの経年変化の把握や維持など公共インフラの管理、VR等を使った情報の発信、すべての建設生産プロセスにおけるi-Constructionの推進など、あらゆる分野での3D点群テータの活用が狙いです。

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3Dデータを活用する解析でお困りの方はご相談ください

高速通信の実用化とともに、3Dデータの本格的な活用が今まさに始まろうとしています。超スマート社会でビジネスチャンスをつかむには、3Dデータをいかに駆使できるかにかかってきそうです。早くからドローンによる3Dデータの収集や解析、データを活用するソフトウェアの開発に取り組んできた弊社は、パッケージソフトの販売ではなくお客様のニーズに合わせた”受託開発”を専門としています。ドローンの活用や3D点群データ技術の活用に関するご質問や、利活用のご相談などがございましたらお気軽にお問い合わせください。