地上すれすれの超低高度から100mを超す高空までワンショットで捉えたり、被写体にごく近くまで接近してホバリングしながらクローズアップ撮影をしたり、有人航空機では困難なアングルで撮影できるのがドローン撮影の魅力です。それだけに、インパクトある映像が求められるCMやテレビ番組を引き立てるためのワン・シーンにドローン映像が多用されるようになりました。
一方では、遭難者の捜索や火山の活動状況調査などにドローンが活用されるようになっています。カメラもセンサーの一つで、ソフトウェアとの連携で地図や3Dモデルを作るデータを引き出せます。赤外線カメラやレーザースキャナなど、載せるセンサー次第で、ドローン撮影の用途は広がります。
空飛ぶカメラ、ドローン
国土交通省は、2018年6月「ドローンを用いた被災状況動画撮影のポイント集」を公開しました。以下は、2018年の台風10号などでのドローン運用で得た知見をまとめたものです。
ドローンによる被災状況調査は、有効な調査手法となってきており、立ち入りが困難な被災箇所の映像が、災害時の状況把握に果たす役割は非常に大きい
このようにポイント集の前文で述べています。災害現場においてもドローンの「空飛ぶカメラ」としての役割が公的に認められている一例といえるでしょう。
安価な空撮手段から測量や調査分野に広がる用途
20万円程度で購入できるドローンでも4K動画が撮影できるようになり、手軽な空撮機材として報道現場やプロモーション映像でも利用されています。
そうした安価なドローンを公共測量で使用できるようにしたのが、国土地理院が「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」及び「公共測量におけるUAVの使用に関する安全基準(案)」(2016年3月)です。従来、有人の飛行機で撮影していた空中写真測量をドローンで実施するもので、測量時間(外業)の大幅な短縮効果が認められ、建設関係の求人では「ドローン」がキーワードになるほど日常化しています。普通のカメラで撮影した空中写真から、オルソ画像、二次元地図、3Dモデルなどを作成できるデジタルデータが得られることから、環境調査や文化財調査、火山防災、森林調査など、用途を広げています。
時、場所を選ばず、デジタルデータの取得が容易に
例えば、レーザー測量装置を用いて地形形状を計測するレーザー測量には、機材をバックパックに収めて歩きながら計測するものから、自動車に積載するモバイルマッピング、そして空から計測する航空レーザー測量などがあります。いずれもレーザー計測機の移動方法が違うだけで、レーザー光の反射時間から距離を計測する点で同じです。ドローンが注目されている理由は、徒歩や車両では立ち入れない場所や、有人飛行機では難しい超低空や室内でも空撮できること。操縦が容易で、しかも安価なことなどが挙げられます。また、レーザー計測機を搭載できるような高機能ドローンなら、赤外線スキャナや一眼レフカメラなど搭載する計測機器を簡単に交換できます。必要な時に、いつでも、用途に合わせたデジタルデータが容易に取得できることが注目される理由といえるでしょう。
ドローンは空飛ぶセンサーの時代へ
私たちが普段使っているカメラは可視光線領域をデジタルデータとして捉えるセンサーと言い換えることができます。赤外線領域まで捉える範囲を広げたカメラが赤外線センサー。そのデータを視覚化したのがサーモグラフィーで、温度差を目で確認できます。ドローンは空飛ぶカメラから空飛ぶセンサーへと役割を広げています。
赤外線カメラで安全地帯から火山噴火を手にとるように観察
火山活動の観察はドローンにピッタリな舞台です。地震研究所・気象研究所・環境省は共同で2018年5月29日~6月1日の日程で西之島の観測を行いました。「第141回 火山噴火予知連絡会資料・西之島」(平成30年6月20日)によると、当時、火口より1.5 km 以内が規制区域となっていたため、西之島の近くに停泊した船からドローンを操作し、目視外飛行で調査が進められました。通常のカメラによる外観観察と、赤外線センサーによる地表温度分布、そしてドローンに装着した装置で噴出物の採取も行われました。危険地帯におけるドローンの有用性が実証された好事例といえるでしょう。資料写真からは、山頂に形成された直径百数十メートルの火口(主火口)から、火山ガスがたなびく様子がよく見て取れます。また、赤外線カメラが捉えたデータは、ガスが噴出している周辺(150℃超)は赤色、噴気孔周辺(100℃前後)は黄色と温度が色で視覚化され、温度分布がひと目でわかります。
自律飛行で同じコースを何度でも飛行可能
活動を続ける火山のような危険地帯で不可欠な目視外飛行。それを実現しているのがドローンの持つ高精度な測位性能です。常にどこを飛行しているのかを確認しながら、正しいコースを維持する自律飛行能力こそ、ドローンが計測機器として優れている点といえるでしょう。反復計測でデータを積み重ねて「〇〇が△△になると~~が発生する」といった傾向を把握していくために最適な機能です。
業務の効率化はデジタルデータの活用から
西之島の観測事例で示したように、一見すると落ち着いたように見える山の様子も、赤外線で見るとまだまだ高温で危険な場所が存在するということがわかりました。それがデジタルデータの優れた点です。ソフトウェアと連携することで、理解しにくい事柄を容易に図やモデルとして視覚化し、誰もが理解しやすい形で情報を提供できます。作業をするスタッフ間の意思の疎通を円滑にすることは、あらゆる分野の業務改善につながります。そのためには、ユーザーの仕事を理解し、問題点を一緒に考え、一つ一つ解決しながらソフトウェアを開発していくことが大切です。弊社は、そうした考えのもと、受注開発に努めています。ドローンに関してはもちろん、その他、デジタルデータ処理に関する疑問やご要望があれば、お気軽にお問い合わせください。