インプレス総合研究所の推定によると、国内のドローンビジネス市場は、2024年度には5,073億円(2018年度の約5.4倍)に達すると見られています。中でもドローンを活用した業務を提供するサービス市場は3,568億円(2018年度の約10倍)と大幅な伸びが予想されています。そうした市場の拡大の背景には、不利な立地を逆手に取って観光地化を目指すなど、ドローンを地方創生の足掛かりとして活性化を目論む自治体の取り込みがあります。その一例を見てみましょう。

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ドローン特区、広がる自治体利用

「空の産業革命」の実現を目指して国や自治体が積極的にドローン運用を推進しています。2020年代の前半には、都市部でのドローン配送の実現に向け法整備が進んでいます。

都市部での宅配利用を目指す千葉市

千葉市は2015年、「ドローン宅配・ロボットタクシーの無人運行などの実証実験を柱とする未来都市実証特区」に選定され、「空の産業革命」の目標である都市部におけるドローン配送の実証実験にいち早く取り組んでいる自治体です。

東京圏国家戦略特別区域会議 第3回「千葉市ドローン宅配等分科会」資料(2018年10月24日)から、進捗状況を見てみましょう。千葉市のドローン配送は、幕張新都心に近接する東京湾臨海部の物流倉庫から、海上や河川の上空を飛行し、幕張新都心内の高層マンション群までドローンで物資を運ぶという構想です。2016年4月11日、イオンモール幕張新都心からの「物資運搬」の検証と高層マンションへの「垂直飛行」の検証が行われました。これは、都市部における初めてのドローン宅配のデモンストレーションです。

同年11月には、稲毛海浜公園で海上約700mを飛行する荷物配送のデモンストレー ションを実施しています。2017年6月には、目視内ながら往復12kmに及ぶ海上飛行を実施。2018年9月には物流倉庫での非GPS-GPS切り替え実験も行われました。同年10月に、マンション住戸までの個宅配送実験を実施。また、上空の気象や電波状況の確認などを行なっています。次の段階は、「第三者上空」や「補助者なしの目視外飛行」、飛行レベル4「有人地帯での目視外飛行」の検証です。空の産業革命はもう目の前に迫っています。

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県が独自の特区創設、ドローン利用推進も

千葉市が国のドローン特区に指定されたのと同じ2015年、徳島県那賀町は、県のドローン特区指定を受けています。同県には意欲のある市町村の取り組みを総合的に支援する「徳島県版地方創生特区」事業があり、指定されると県が定めた規制の緩和、県税等の減免、財政支援、関係機関との調整の便宜などが受けられます。

那賀町ドローン推進室のホームページによると「かつては林業で栄えましたが、近年は人口減少に悩む山村の一つとなっていました。この村には、日本の滝100選に選出された名瀑や、樹氷などが見られる豊かな自然があり、ドローン撮影の愛好家には夢のフィールド。また今後、飛行規制も進むはず。ならば、市内から遠い、消滅可能性都市といったマイナス面を逆手にとって空撮アテンドをワンストップで行うサービスを提供し、各地からドローン撮影愛好家が集うまちづくりをしたい。ドローンで交流人口の増加を目指し、将来的にはUIターンにつなげることができれば」と、ドローン特区を申請した経緯と狙いが語られています。

同推進室のホームページからは、滝やダム、風車など35か所の空撮ポイントを写真と地図で紹介する那賀町ドローンマップや飛行申請書などをダウンロードできます。同町では、今年夏、「那賀町ドローンマップ」の掲載スポットで撮影した写真・動画をSNSにアップする写真・動画コンテストを開催しました。ドローンレンタルサービス会社と提携するなど、日本一ドローンが飛ぶ町を目指し努力が続けられています。

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主力は安全管理の省力化か

道路橋やトンネル、河川、下水道、港湾等の公共インフラは、高度成長時代に整備されたものが多く、建設後50年以上経過し老朽化が心配される施設が多くなっています。安全な社会生活を維持するためには早期の点検と修理が望まれますが、件数があまりに多いことや管理者が市町村であり、予算や技術者の不足が課題となっています。

始まっているインフラ点検利用

橋梁(2m以上)約70万橋 (68%)、道路(トンネル)約1万本(23%)、道路(舗装)約3100㎢(66%)、下水道(管渠)約43万km( 75%)、下水道(処理場)役2100か所(84%)、公営住宅約217万か所(39%)、公園約10万か所(76%) (2018年調べ)。

上記は、主なインフラの件数で、( )内は市町村が管理者である割合です。いかに安全管理が市町村に依存しているかが分かります。ところが、市町村における土木・建築部門の職員数は、2005年度(10万5000人)から減少傾向にあり、2017年度では約9万人にまで減っています。少子高齢社会にあってインフラの長寿命化は、社会の持続可能な発展に関わる大きな手立ての一つであり、予防保全の重要性がクローズアップされています。円滑な点検修理を進めるためには、新技術 の開発・導入による作業の効率化が不可欠です。

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ドローンは空飛ぶセンサー

インフラ点検へのドローン導入は古く、2017年に「静岡県が藤枝総合庁舎を対象に4Kカメラと赤外線カメラを搭載したドローンで外壁面を撮影しデータを収集。高所作業車とゴンドラを使用すると調査に5日間必要だが、ドローンを使用すると1日で完了、調査期間の短縮とコスト削減でメリットを確認した」と日刊建設工業新聞が報じています。

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未来投資戦略2018(2018年6月15日閣議決定) では、次世代インフラ・メンテナンス・システムの構築等インフラ管理の高度化に関して、以下のことがKPI(重要業績評価指標)として掲げられています。

国内の重要インフラ・老朽化インフラの点検・診断等の業務において、一定の技術水準を満たしたロボットやセンサー等の新技術等を導入している施設管理者の割合を、2020 年頃までには 20%、2030年までには100%とする

引用: 未来投資戦略 2018―「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革― 平成 30 年6月 15 日

すでに風速20m程度の強風下で飛行可能な全天候型ドローンやグリーンレーザー光線を用いた陸上と水中を同時に面的に計測可なレーザースキャナを備えたドローンの実装が進められています。

デジタルデータが仕事を繋ぐ社会がもう目の前に

橋梁点検では、近接目視が原則ですが、2019年2月にドローンを補助的に用いることが可能になりました。今後は、専門家の近接目視に加え、ドローンなどのロボットが撮影した精細な画像データをAIが損傷箇所の自動判別を行うとともに、修理結果等を含めたデータ蓄積が行われ、3Dモデル上で経年変化が一目でわかるワークフローに急速に変わっていくものと思われます。ほんのわずかな空き地があれば離着陸でき、プログラム通りに自律飛行できるドローン。自治体でも、カメラ、赤外線スキャナ、レーザースキャナ、温度計や湿度計など、あらゆる計測器を搭載できる空飛ぶセンサーとしての役割が拡大していくのではないでしょうか。

ドローンが集めた膨大なデジタルデータをいかに効率的に処理、活用するかが、運用の成否を決めます。弊社は、受注生産でクライアントのニーズに応じたソフトウェアを開発する会社です。ドローンを利用したデータ収集方法や処理に関する疑問点やご要望があれば、お気軽に弊社にご相談ください。

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