ドローンと組み合わせて使用する調査機器には、赤外線カメラやレーザースキャナ(LiDAR)、ミリ波センサーなど数多く種類があり、写真撮影に用いる普通のカメラも可視光線を捉えるRGB(可視画像)センサーの一種です。こうしたセンシング機器をドローンに搭載することで、上空からの撮影はもちろん、自律飛行能力を活かした巡回監視や空中測量、危険な場所での調査などを可能にします。

それだけに、今、利用を考えているセンサーが、その業務に対して妥当なのか、信頼性はどうか、ドローンとの相性や取得データの解析方法など、センシング機器とデータ解析方法のマッチングが業務効率化に大きく関わってきます。

一般的なカメラもセンサーの一つ

まず、ドローンに搭載できるセンサーの特徴を見ていきましょう。

低コストで応用範囲多彩なRGBセンサー

建設現場で利用されている測量用ドローンのセンサーは、実は普通の写真撮影に利用するカメラと同じものです。主に測量用に使われているPhantom 4 Proにビルトインされているカメラは、1インチ・2000万画素のイメージセンサーと、24mm(35mm換算)の広角レンズを備えた高級コンデジクラス。

このスペックは、「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」(国土地理院)が求めるカメラ性能を満たしています。取得した画像データを処理することにより、現場の2D地図から、土量計算、3Dモデルの作成まで、多様な成果を得ることができます。

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温度差を視覚化する赤外線画像センサー

稲の画像

赤外線画像センサーは、赤色より波長の長い可視領域外の電磁波を捉えるセンサーです。ドローンに搭載した運用事例としては、太陽光発電の稼働状況の調査や橋梁などインフラ構造物のサビの点検などがあります。

また、農業分野でも経営効率化のデータ収集手段として注目されています。植物は光合成のために、可視光を吸収しますが、近赤外線波長の領域は、吸収せずに反射します。その性質を利用して植物の生育状態を数値化でき、植生調査に利用できます。

弊社でも、イネの生育状況を調査するテストを新潟県魚沼市の水田で実施しました。ドローンに搭載した赤外線センサーで取得したデータを弊社のソフトウェアで解析すると、盛んに光合成されているエリアは緑色、そうでないエリアは赤色で可視化され、直感的に作物の生育状態を把握することができます。細かい解析により施肥や収穫時期の判断、収穫量の予想など、農業経営の精密化に役立ちます。

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草木を透過して地形を見せるレーザーセンサー

レーザーセンサーは、発射したレーザー光が対象物に反射して戻ってくる時間を測定することで物体を検出し、形状を表す3D点群データが取得可能です。また、ある程度の薄さまでの草葉なら貫通してレーザーが届くことから、草木の下に隠れた地形を読み取れるようになることから遺跡調査などで利用されています。

「ジャングルに眠る古代遺跡」といった見出しとともに掲載されている3D写真のデータ取得には、このレーザーセンサーによるスキャニングがよく利用されています。林業でも、樹高、幹の太さ、樹種の調査にレーザーセンサーが活躍しています。

これまでは徒歩による調査が主流でしたが、作業の効率化に向けてドローンの活用が模索されています。弊社はドローンにLiDAR(レーザーセンサー)を搭載し、スキャンした3Dデータから樹木の位置を特定したり、太さを自動計算したりするシステムを開発しています。

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夜間や降雨の影響に強く、対象物を遠くから正確に捉えるミリ波センサー

ミリ波センサーは、30~300GHzの周波数の光に似た性質を持つ電波です。夜間や降雨の影響に強く、防犯用の監視カメラやサービスロボットにも搭載されている身近なセンサーで、リアルタイムで対象物の位置と速度を計測できるデータが取得できます。障害物との距離を正確に測れるため、自動車の衝突防止装置やドローンの障害物回避システムなどに利用されています。

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可視・可聴領域データもAIで広がる用途

カメラを搭載するドローンの画像

さまざまなセンサーを見てきましたが、人間の目や耳で捉えられる領域のデータでも、AI(機械学習)と連携することでその価値が飛躍的に向上します。

RGBセンサー+AI 普通のカメラが自動制御の要に変身

人は、置かれた状況や、これから始める行動の内容によって態度が変わり、カメラで捉えることができる特徴的な動きとなって表れます。撮影は特殊なセンサーを使わず、一般的な可視光カメラ(RGB)のみで利用可能です。

この特徴的な動きを大量にドローンのカメラで撮影し、行動と紐付けて機械学習させることで、以後、その特徴を持った動きをする人物をドローンのカメラが捉えた時、AIはその人の行動を予測し、問題があれば管理者に自動的に報告できます。群衆から不審者を検出するセキュリティーの強化や、雪や海面など遭難者を発見する効率の向上などに役立つでしょう。

こうしたカメラを利用した機械学習の利用範囲は人間に限りません。動物の種類判別による害獣対策の効率化、ジェットコースターのレールや大規模な工場の点検業務のスピードアップにも寄与します。

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音声センサー+AI 機械のノイズ変化で異常を事前に察知

電磁波だけでなく音をセンシングして利用することも可能です。海底地形の視覚化に利用されているソナーはその代表格といえるでしょう。ソナーは超音波ですが、可聴域の音もAIと組み合わせることで新しい用途が広がります。

例えば、正常な機械の運転音と異常音を機械学習させることで、可聴領域の音も緊急時の自動停止などに利用でき、工場の安全操業の自動化に寄与します。以前から音の分析にはDSP(デジタル信号処理)が用いられてきましたが、弊社では、AIを用いた音の傾向分析も手掛けています。

例えば、工事現場の掘削機械であれば、掘削時の音からその壁面の材質や硬いか、軟らかいかなどの判定が可能で、工事の安全対策や工法の選択に役立ちます。

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目的に応じた装置や技術の使い分け、お気軽にご相談を

ご紹介してきたように、物体の検知や3次元データ化にはさまざまな手法やセンサーがあります。可視光カメラによる三角測量、レーザー光の照射を用いたLiDAR、ミリ波などまで、弊社はいずれのセンサー、手法も手掛けています。

センシングで得たデータは、AIと連携させることで、データの価値が飛躍的に高まります。弊社は、敷居が高いと思われがちなAI導入を、限りなくシンプルな形でご提案します。ドローンを利用したセンシングについて疑問やご要望があればお気軽にお問い合わせください。