日本水中ドローン協会は2020年3月、水中ドローンの機能・性能に関する基準を策定し、その基準に適合した機種の認定を行う、水中ドローン機種認定制度を新設するという方針を発表しました。現在、水中ドローンは、ダイバーによる目視調査等の代替が主な利用方法ですが、空のドローンと同様、マーケットの広がりとともに、様々なセンサーが搭載できる安価な水中ドローンが登場するはずです。
数メートル、時には数センチしか透明度がない水中では、高分解能ナローマルチビームなどソナーの活用が不可欠。水中ドローンとリモートセンシングについて見ていきましょう。

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業務用水中ドーンとは?

水中ドローン協会は、「水中ドローンとは、水中を潜水潜航可能な小型無人機の通称」と定義しています。

おもちゃからROVに回帰する水中ドローン

簡易的な水中映像を撮影するROVのおもちゃ版として登場した水中ドローンは、今や潜水深度の向上、自律航行の実現など高度な機能を有した機体が登場、ROVと呼べる段階に進化しています。現在、水中ドローン協会は5機種を認定しており、いずれも最大深度は100mとダイバーが容易に到達できない深度での調査が可能です。また、1080pや4Kの高性能カメラを搭載しています。

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港湾インフラ調査や船底検査、広がる用途

こうした高性能な水中ドローンが登場して、アクティビティとしての水中映像の撮影から、カキなど養殖産業での生育状態の観察、港湾インフラや船舶の水中部分の点検などに用途が広がっています。

牡蠣養殖の画像

NTTドコモは、2019年11月、5Gによる 大容量・低遅延通信と水中ドローンを活用した漁場遠隔監視の実証実験を行いました。
これは、水産業界が期待するICT活用による労働者負担削減への寄与を目的とした実験で、高画質の撮影映像を常時伝送しながら水中ドローンを操作することに成功しています。

遠隔から漁場の状況が常時観測可能になれば、魚の養殖現場で餌やりの作業を行う効率的なタイミングを把握することが可能となります。他にも、カキの養殖現場で海中の状態が把握できれば、いかだ上で確認する方法に比べ、成育状況の把握が効率化されるだけでなく、産卵や幼生の浮遊状況も確認できるため、養殖技術の底上げが期待されます。

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水中の主役はソナーセンシング

ただ、水中の透視度は同じ場所でも、季節や時間で著しく変化します。ほんの1時間前まで10m以上見通せた海底風景が、潮が変わっただけで1m先すら見えなくなることも。こうなると、いくら高性能のカメラを搭載しても鮮明な写真の撮影は望めません。視界が限られる水中環境下ではソナーセンシングが主役です 。

海洋調査助ける様々なソナー

ソナーは音波を利用するため水の濁りの影響を受けずに調査することができます。「水産基盤施設の維持管理点検マニュアル 参考資料」(水産庁)では、漁港等の点検に用いる2種類のセンサー、マルチビーム測深機と水中3Dスキャナーを紹介しています。

マルチビーム測深機は、最大で256本の音響ビームを扇状に発受信し、水中部の地形等を三次元データとして取得する装置です。測深範囲はリアルタイムに船上のパソコン画面に表示されるため、データの取得状況を確認しながら調査できる利点があります。一方、水中 3D スキャナーはナローマルチビームソナーに比べて周波数が高く、水中構造物の形状をより詳細に再現できるメリットがあります。ともに防波堤、護岸、係船岸の漁港施設の機能診断に用いられる技術です。
このほか、サブボトムプロファイラー (地層探査装置)や海底の底質分布確認(岩礁・礫・砂・泥・砂漣)、海藻や藻場の分布状況確認に効果的なサイドスキャンソナーなどがあります。

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自動航行も実現。3Dマッピングで海底を視覚化

このように、一口にソナーと言っても用途に応じて多くの種類がありますが、目的は取得したデジタルデータを解析し、厚い水の層に隔てられて見ることの出来ない海底の景観を視覚化するという目的は同じです。調査結果をデジタルデータとして取得しておけば、地図にも3Dモデルにも加工することが出来ます。
港湾などのインフラ調査なら調査ごとにデータを蓄積していけば経年変化を直感的に知ることが可能です。特に、港湾など狭くて浅い水域では、繊細な操船が求められます。それだけに、随時最新情報に更新される高精度な水深データは、船舶の安全で効率的な運用にとって欠かせません。

「水域施設の計画・管理に関する調査Research on planning and management of water area」(研究期間 平成29年)によると、船舶の安全な航行のために港湾管理者が浚渫を実施し、施工前、施工後にマルチビームによる精度の高い測量を行い出来形管理しているが、その結果は必ずしも海図の精度情報に反映されていない。国際標準に基づいた海図の電子化が進む中、浚渫データが海図に反映されないために、せっかく安全に航行できる水深が確保されていても、測量精度情報に基づく運行を行う船舶は入港を避けることも考えられると、データ連携の重要性を指摘しています。

こうした港湾の水深データは、実用化が進められている船舶の自動運行にとって不可欠な基盤データとなるはずです。船舶ごとに運行に必要な水深は異なります。正確な水深がわかっていれば、潮の干満、積載量による吃水の変化などの諸情報と連携して、最適な入出港のための航路や時間を細かく調整することができるでしょう。自動車の自動運転におけるダイナミックマップに相当する、自動運行船における電子海図のデータリンクに対する関心がまだまだ薄い今が、海底調査データ利用拡大のチャンスと言えそうです。

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水中ドローンでもぴったりなソフトウエアを受注開発

記事で見てきたように、ドローンは水中でもデジタルデータ取得のためのプラットフォームとして活躍しそうです。陸上と同様に、取得データが価値ある成果を生み出すためには、目的に応じて作り込まれたソフトウエアでの解析が効果的です。
弊社は、ドローンセンシングで取得したデジタルデータ活用が得意な会社です。クライアントのニーズをしっかりとお聞きして、最適なソフトウエアを受注開発いたします。ドローンの活用方法やデータ解析に関する課題や疑問などがあれば、お気軽にお問い合わせください。