風光明媚な湖沼に突如現れて、水面を緑色の濁水で覆い、異臭を放つアオコ。水道水の品質悪化や観光レジャーへの妨げになるばかりか、猛毒成分を含む種類もあり、水生生物だけでなく、湖水を飲んだ家畜やペット、時には人にまで健康被害を及ぼすことがあります。
そうした被害の防止・軽減をするためのアオコの早期発見、発生予測のデータ取得に、ドローンによるリモートセンシングの貢献が期待されています。

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厄介なアオコの発生。景観悪化、異臭や毒性も

アオコの正体は、ミクロキスティスやアナベナなどの藍藻類のコロニー。富栄養化した湖沼で、初夏から秋に掛けて大量発生して、湖沼の水面を緑色に染める現象です。

夏場の湖沼を緑に染めるアオコ

緑色の粒子状の藻体が水面を漂うシーンは、緑色の粉をまいたように見えることから「青粉(アオコ)」と呼ばれるようになったそうです。アオコ発生が及ぼす悪影響は思いのほか広範囲です。
「農業用貯水施設におけるアオコ対応参考図書」(農水省)は、以下の影響や被害を指摘しています。

農作物の品質低下/高濃度のアオコが混入したかんがい用水は緑色に着色しているため、その水を直接、農作物に散布した場合、葉菜類など農作物への着色影響が考えられる。

施設障害/アオコが混入したかんがい用水を散布する際、噴霧器や多孔管等の穴が目詰まりする恐れがある。アオコの濃度が高くなる程、顕著になる。
景観悪化/アオコが発生することにより、貯水施設の水面が緑色に着色し、透明度が落ち、景観が阻害される。
悪臭/アオコが集積すると独特の藻臭を発し、ひどい場合は悪臭問題となる。
魚類斃死/ アオコが魚のえらにつまり魚を窒息死させる可能性がある。
風評被害/アオコの発生が報道された場合に、農業や水産業等に影響が生じる可能性がある。

引用: 農業用貯水施設における アオコ対応参考図書 1章 | 農林水産省 農業用貯水施設における アオコ対応参考図書 2章 | 農林水産省

海外では、多数の人の中毒死例も

アオコに含まれる「ミクロキスチン」は青酸カリよりはるかに強い猛毒。国内では人への健康被害の報告例は見当たりませんが、海外では深刻な事例が数多く報告されています。

例えば、1989年イギリスでは、湖で水泳訓練を行なっていた兵士が下痢などの中毒症状を訴えました。原因は、湖に毒のあるタイプのラン藻が大量に発生していて、水泳中に誤飲したためです。
その他にも1996年ブラジルでは、病院で多くの透析患者が亡くなるという事件が発生しました。有毒タイプのラン藻発生を知らずに水源に利用し、病院の浄化装置が十分働いていなかったことが重なって発生した不幸な事故です。2007年中国の太湖では、アオコが大発生し給水に支障が出たため、大勢の市民が飲用水確保に奔走するという事件も引き起こしています。
アオコは、この太湖のように富栄養化が進んだ湖沼を好みます。

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ドローンで兆候を早期に把握

ドローンによる水質監視

ダム貯水池のアオコの発生時状況はこれまでボートを使って調査していましたが、ここでもドローンの運用が進められています。低空から短時間で広域調査でき、目的に応じたセンサーを搭載して手軽にリモートセンシングを実施できるようになっています。

自律飛行で定期パトロールが容易に

ドローンで撮影した画像を活用した水質監視手法の検討が進められています。
鳥取県は、県内の三大湖沼で赤潮・アオコが毎年発生し、魚類大量斃(へい)死などの異変も度々発生していることを憂慮。広範囲を迅速に調査する必要から、ドローンの運用に早くから取り組んできました。ドローンに搭載したカメラを用いて湖沼の俯瞰(ふかん)画像を撮影し、得られたデータから水質汚濁物質(赤潮・濁水等)、水草、藻類などの 分布状況を得るというものです。

リモートセンシング技術を用いることで、これらの画像からプランクトンの指標であるクロロフィルa濃度の情報を得る手法も開発し、赤潮の平面濃度マップを作成することができました。今後、これらの成果を水質調査だけでなく他の様々な分野に活用していきたいと、鳥取県衛生環境研究所が平成27年度に「ドローンリモートセンシングの活用に向けて」の中で報告しています。

ダム湖の水質調査でもドローン運用が注目されており、陸上水域における多角的なドローンの運用を解説する「UAVによる河川調査・管理への活用の手引き(案)改訂版」は、ダムの水質調査事例として三春ダム(国土交通省三春ダム管理所)を取り挙げています。
ドローンで撮影した画像を活用し、ダム湖内のアオコの発生を予測する水質監視手法を確立するための検討です。可視・近赤外・サーモカメラを用いて湖面を撮影し、データ蓄積と解析の繰り返すことで、画像と水質情報の関係性の有無を解析し、アオコの原因となるミクロキスティスと関連性のあるクロロフィルaの発生を予測しようとするものです。

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記事で取り挙げたように、湖沼水面など人の立ち入りが困難で、しかも、広域監視やデータ収集が必要な現場においては、ドローンの利用が極めて有効です。そして目的に応じたセンサーを搭載し、精度の高い解析を加えることで、獲得したデータの価値を高めることができます。

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