石油・化学や電力・ガス等の産業・エネルギー関連インフラは高度成長期に作られた施設が多く、高経年化から定期的な点検が必要です。しかし、人材の高齢化と人手不足・技術・技能伝承力の低下が点検業務推進の課題となっています。そこで政府は2020年6月、スマート保安官民協議会を立ち上げ、IoT/AIといった新技術の積極的な導入と人材育成を進める方針を打ち出しました。その中で、目視点検をドローンに代替させるという方針を明記したことが注目されています。ドローンによるリアルタイムのモニタリング、遠隔監視等も検討されており、ドローン点検の裾野はますます広がりそうです。

新技術導入を阻害する規制の見直し

スマート保安官民協議会は、2020年3月までにIoT/AI等の新技術の導入を阻む制度など阻害要因を洗い出し、積極的な導入と人材育成を進める方針を示しています。第1回スマート保安官民協議会で示された資料からスマート保全におけるドローンの役割を見ていきましょう。

目視点検の代替としてドローン利用がOKに

ドローン

近年、インフラ維持のコストは増加傾向にあり、2010年の3兆円弱から2018年には6兆円弱に倍増しました。その背景となっているのが、産業保安現場における設備の高経年化と人材の高齢化です。2025年には、国内約6000カ所ある高圧ガス設備のうち半数以上が稼動年数50年以上となり、検査対象は増加を続けています。

また、人材の高齢化については、電気主任技術者の免状取得者の約4割が60歳以上。製造業就業者の65歳以上の割合は4.5%(2000年)から8.8%(2019年)となっています。ベテランの退職や危険と目される職場での採用難などで、調査要員の確保が心配されます。

その打開策が新技術の導入です。これまでも、プラントのデジタル化を促進するため、プラント内の点検や災害対応で、ドローン活用促進に向けたガイドラインや活用事例集を策定(2019年3月策定)され、その下地をもとに、目視点検の代替としてドローンの利用を明記したことが注目されています。

ドローンの導入によるメリットとして、「高所でも足場を設置せずに容易に点検できること」「設備状態の的確な把握による定期検査周期の合理化」「遠隔監視(カメラ、センサー等)により、監視業務の省力化・自動化」などを挙げています。ドローンの活用だけで事業所あたり年間1~2億円のコスト削減効果があると試算しています。

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人材育成。分かり易く使いやすいソフト開発が急務

目視点検のドローンによる代替が明記されたことは、従来の点検業務の概念が大きく転換したことを示すものです。指針は、IoT/AI等の新技術が現場で円滑に活用できるよう、スマート保安を支える人材の育成が必要と訴えています。企業が行う新技術の開発・実証・導入やスマート保安を推進するための人材育成等の支援に取り組むとしています。
点検におけるドローンの活用や、IoT/AIによる常時監視・異常検知など、新技術の開発・実証・導入を迅速かつ効果的に推進するためには、より分かり易く利用しやすいセンシング方法や解析技術の開発が不可欠です。

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海上油田や石油貯蔵タンク内部の点検で活躍

タンク

海外のプラント等の点検ではすでにドローンの利用が日常化しています。「プラントにおけるドローン活用事例集」に紹介されている英国企業の事例をもとにメリットとデメリットを見てみましょう。

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電磁波やGPSの障害への対処が課題

SkyFuture社(本社:英国)は、タンク内部点検を始め、フレア設備、桟橋、オフショア設備、プラント全体のガス検知、3Dマップ作成において、27か国以上で事業を展開するドローン運用の大手企業です。飛行実績1万1000時間以上を誇る同社が挙げるドローン点検のメリットは、その迅速性です。ロープアクセスと足場を利用する従来の検査技術よりも8倍速く、運用コストも85%の削減効果があるとしています。ただ、電磁波やGPSの障害がドローン運用において注意点としています。

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Cyberhawk社(本社:英国)も高所設備の点検(洋上/陸上)、オフショア設備、タンク内部の点検、3Dマップ作成等を行い、年間3000回程度の飛行実績を持つドローン点検に力を入れている企業です。
プラットフォームのアンダーデッキなど潜在的な磁気干渉の影響が心配される場所や構造的に複雑な場所では、GPSを使用せず完全に手動で飛行させる必要があるため、経験豊富なパイロットが担当します。こうした仕事に就くためには、最低18か月または500時間の飛行経験が必要としています。ドローンの点検利用には電波状態に左右されない飛行技術が重要です。

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必要な電磁波に影響されない自律飛行方式

金属による電磁波の影響や、タンク内部のように外部からの電波が遮断される現場では、ドローンの自律飛行を助けるGPSの利用が困難です。多様な業界で点検業務へのドローン利用が期待される中で、非GPS下での操縦を熟練パイロットにだけ頼っているわけにもいきません。

弊社は、その回答としてARマーカー方式の自律飛行システムの開発に取り組んできました。ドローンは搭載したカメラであらかじめ飛行ルート上の要所に張付されたマーカーをとらえ、現在位置と機体の向きを推定します。その情報をもとに飛行方位や高度などを修正しながら自律飛行を行います。
また、飛行プログラム自体を修正せずに、マーカーの種類や貼付位置を変更するだけで飛行ルートを調整することが出来るのもメリットです。

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ますます広がるドローンの活躍分野

記事で見てきたように、電力・高圧ガス分野の保安検査等の規制・制度について、新技術の導入が政府の肝煎りで進められています。点検分野でのドローンの需要は確実に大きくなっていくことでしょう。洋上風力発電所設置のために一定の準備が進んでいる区域が、令和元年11月時点で11か所あり、令和2年11月28日には、秋田県沖と千葉県沖の4区域で発電事業者の公募が始まりました。もうすぐ、海面からブレード先端まで高さ200mに達する巨大な風車が洋上に林立するのです。
日本風力発電協会は、2030年に洋上風力発電で導入量1000万kWを目標に掲げており、経済波及効果として13~15兆円程度 (2030年までの累計)、雇用創出効果として8~9万人程度(2030年時点) を見込んでいます。菅首相が脱炭素社会推進を掲げる中で、ドローンが活躍するフィールドはますます広がっていきます。こうしたビジネスチャンスをとらえるためには、費用対効果の高いドローンの飛行運用と、センシングデバイスの選択、および解析ソフトの利用が不可欠です。

弊社は、創意工夫で導入コストを下げながら、現場の役に立つものをお客さまとともに作り上げていくソフトウェア開発会社です。疑問点やご要望があれば、お気軽にお問い合わせください。

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