昨今、ドローンは様々な用途に使用され、趣味の空撮から、測量等のビジネス領域での使用にもその用途を拡大し、認知度及び利用者も年々増加しています。今後も、ますます用途は広がり、ドローンの展望は明るいと言えるでしょう。
しかし、ドローン技術の進歩や普及によって、ドローンの危険性に対する認識が希薄になってきているのも事実です。ドローンの危険性とは、それはやはり「墜落」です。
ドローンは墜落しないと思いたいところですが、ドローンは墜落するという認識が大前提であるべきです。では、その前提を踏まえたうえで、どうすればリスクを最大限に引き下げることができるのでしょうか。
それは、正しい知識を持ち、適切な運用を行うことです。つまり、正しい知識を持ち適切な運用をすることで、墜落というドローンを扱う上で一番懸念されるリスクを最小限に抑えることができるということです。
ではドローンが墜落するのはどういう理由が考えられるのでしょうか。ここでは、ドローンの墜落する要因と、その対策について触れていきたいと思います。
ドローン墜落要因とその対策
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1.風速及び天候状況
強風はドローンが機体バランスを崩し、墜落する要因です。 機体性能にもよりますが、風速5m/sを超える状況下での飛行は危険といえるでしょう。 一定の方向からの風であれば、ある程度機体バランスを維持することができるかもしれませんが、様々な方向からの風が吹き荒れる状況下での飛行は非常に危険を伴うため、避けたほうが良いでしょう。 またドローンの進行方向に対しての追い風にも、注意が必要です。 ドローンが飛行するために、必要な「揚力」を失いやすく、墜落する可能性が高いからです。
<対策>
- 天気予報を事前に確認
- 風速や風向きを小まめに計測
- 基本的に風上ではなく、風下に向かって飛行させる
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2.障害物との衝突
ドローンが何かに衝突した場合、機体のバランスを崩し墜落する可能性があります。特に電線と衝突した場合には、電気系統がショートする可能性も高いので注意が必要です。
<対策>
- 周囲の状況をよく把握する
- ドローンと障害物の距離感を正しく把握する
- モニター画面のみではなく、飛行中のドローンの状況や周囲を注視する
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3.バッテリー不足
ドローンの動力源はバッテリーです。 飛行中にバッテリーが不足すれば、当然墜落してしまいます。 特に、ホームポイントから遠く離れた場所を飛行させている際、ホームポイントへ帰還する最中にバッテリー不足により、墜落してしまうケースが多いようです。
<対策>
- バッテリー残量を小まめに確認する
- 飛行している地点から着陸地点まで移動する際のバッテリー消費についても必ず考慮する
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4.バッテリーの異常
バッテリーのセルバランスに異常があったり、バッテリーの温度が著しく低い場合、突然墜落する可能性があります。特に冬場にはバッテリー温度が低くなってしまうことが多いため、より注意が必要です。
<対策>
- 飛行させる前に必ずセルバランスとバッテリー温度を確認
- セルバランスに異常があるものは適切に廃棄し、新品と交換する
- バッテリーを保温ケースなどで保管し、温度管理を適切に行う
- バッテリーが低温と考えられる場合、ホバリング(空中停止状態)などで様子を見てバッテリー温度が上がってから使用する
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5.電波障害
電波障害が発生すると、送信機と機体間での通信が正常に行われなくなり、墜落する可能性があります。鉄塔や電波塔には特に注意が必要であり、それらの付近では飛行を中止した方が良いでしょう。
機体によっては強い電波障害がある場合、離陸できないこともあります。<対策>
- 近隣に電波障害が発生となるものがないか、事前に確認する
- 様子見の飛行を行い、異常がないことを確認する
- スペクトラムアナライザーを使用して、電波状況を把握する
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6.自動帰還
ドローンには自動操縦で帰還する機能があり、大変便利です。しかし、設定や使用するタイミングに誤りがあるとこれもまた墜落する要因となり得ます。機体性能にもよりますが、自動帰還する際に障害物を回避することができなかったり、ホームポイントへ直線で帰還したりします。そのため、自動帰還する経路上に障害物がある場合には、衝突してしまう可能性があるのです。
自動帰還する際の高度設定が例えば30mの場合、自動帰還する経路上に30m以上の障害物があると衝突してしまうので注意が必要です。<対策>
- 飛行させる状況に応じた正しい設定を行う
- 自動帰還する際に危険となりうる点について必ず事前に確認し、対策をする
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7.モーターの強制停止/CSC(Combination Stick Command)
ドローンはモーターが回転し、プロペラが回転することで飛行していますが、モーターを起動・停止させる際には、送信機でCSCを行います。このCSCを飛行中に行うと、モーターが急停止し、すぐさま落下します。
なお、CSCは周囲の安全性を確保する目的で意図して使用することもある操作ですが、ドローン操縦士の最も多いミスの原因の一つとなっている操作のため、細心の注意を払う必要があるでしょう。<対策>
- 操作ミスに注意する
- CSC操作について正しく理解する
最後に
ドローンを扱っていると、つい 「ドローンを壊してはいけない」 「墜落させてはいけない」 といった考えが先行してしまいがちですが、第一に優先されるべきことは、周囲の人やモノの安全確保です。
ドローンを飛行させる際にはリスクがつきまといます。しかし、ドローンだからこそできることやドローンにしかない魅力があるのも事実です。
そのため、最も重要なことは「安全」ということを念頭に置きながら、細心の注意を払って操作をすることです。
周囲の安全を確保するためであれば、ドローンを意図的に墜落させるという判断も必要になります。