ドローン業界では空飛ぶドローンだけではなく、水中を自由自在に泳ぎ回る、水中ドローンにも注目が集まっています。

水中ドローンは空飛ぶドローンと比較して認知度が低く、市場規模もまだまだ小さいものではありますが、現代の水産業が抱えるさまざまな課題を解決してくれる可能性を秘めているともいわれているのです。

今回は、そんな水中ドローンに焦点を当てて、水産業が今抱えている課題や、将来的な活用においての可能性についてご紹介します。

水中ドローンを使った水産業の必要性が叫ばれるようになった理由とは?

日本は世界有数の漁場面積を持つ、水産資源国の一つです。日本の漁獲高はかつて、世界1位を誇っていましたが、ここ30年で漁獲量は半減し、現在は世界8位へと落ち込んでしまっています。

漁獲高が落ち込んだ背景には、日本の水産業が抱えるさまざまな課題がありました。水中ドローンについて解説する前に、まずは日本の水産業の現状から見ていきましょう。

漁業生産量は30年間で半減、日本は世界で8位—水産白|nippon.com(出典)漁業生産量は30年間で半減、日本は世界で8位—水産白|nippon.com

日本の水産業の現状

日本の水産業が抱える課題の一つには、生産者の減少が挙げられます。人口自体が減少していることや、オフィスワークやサービス業への就業率が高くなってきたことなどから、30年前の水産業従事者は約25万人であったものの、現在では約15万人にまで減少しているのです。この中でも、60歳以上が約半数を占めているため、水産業に携わる人の数は、今後も減少の一途をたどることが見込まれています。

日本の水産業には属人化している技術や知識が多いという点も、課題として挙げられます。日本の水産業は、沿岸や沖合に船を出し、魚群を一網打尽にするという方法への依存度が高く、全体の約80%を占めているのだそうです。

そして、この漁業に携わるほとんどの漁師が家族経営であることも相まって、豊富な漁場や、潮目を見極めるのは、先代からの口頭伝承であったり、船頭さんの勘に頼ったりするものでした。

技術や知識が属人化することで、息子が継いでくれなければ廃業ということになってしまいます。天候、水温、水質、海底地形などのデータが蓄積され、科学的に分析されていれば、新たに水産業に就労する間口を広げることができたかもしれません。

一方、世界の水産業に目を向けてみると、法人経営による、大規模な生簀を使った養殖による生産量と、船を使った漁獲高とが、ほぼ半々となっています。

養殖は、生簀や装置の点検・メンテナンス、魚介類の生育状況の調査等に多くの費用が必要となるため、家族経営の水産業が多い日本では、なかなか広がらなかったともいえるでしょう。

参考記事

水中ドローンを使った新たな取り組み

このような課題を抱えている日本の水産業ではありますが、水中ドローンの技術を使えば、これらの課題を解決することができるのではないかという期待が寄せられています。

水産業における水中ドローンの活用例

水中ドローンを活用した水産業の一例として、マグロの養殖事業があります。マグロの養殖は職人の世界で、どのタイミングで餌を与えるのか、いつ出荷すべきなのかといった判断を、これまでの経験や勘に頼ってやってきていました。

これを、水中ドローンによるリアルタイムの動画と、天候や水温等のデータを蓄積することで、餌を与えたり、出荷したりするのに最適なタイミングを、科学的に測ることができるようになります。

また、これまでは生簀の中にマグロが何匹いるのか、ダイバーが目視でカウントしていましたが、ここに画像認識AIを搭載した水中ドローンを用いることで、生簀の中にマグロが何匹いるのか、正確に把握することができるようになったのです。

貝や海苔などの養殖効率化にも水中ドローンが活用されています。これまではダイバーに報酬を支払って生育状況の把握をしていたものが、水中ドローンを用いて生育状況を確認することで、費用削減や業務効率の向上に役立っています。

養殖場においては生簀や網などのメンテナンスが避けられませんが、水中ドローンを活用すれば、補修の必要な箇所を映像で正確に把握することができるので、点検作業の効率化やメンテナンスに係る運用コストの削減も可能になるでしょう。

ISIDと双日グループがスマート漁業の共同実証実験を開始、AIで養殖マグロをカウント|IoTNEWS(出典)ISIDと双日グループがスマート漁業の共同実証実験を開始、AIで養殖マグロをカウント|IoTNEWS
養殖業などのための海の中の検査点検作業を無人で行う水中ドローンSeaDrone|TechCrunch(出典)養殖業などのための海の中の検査点検作業を無人で行う水中ドローンSeaDrone|TechCrunch

ドローンによる水産業の実現可能性は?

ここまで、水中ドローンを使った水産業の事例をご紹介してきましたが、今後、水産業において水中ドローンの活用が拡大する可能性はあるのでしょうか。

正直なところ、まだまだ課題は山積

水中ドローンメーカーは各社がしのぎを削って開発競争をしていますが、まだまだ発展途上の分野です。例えば電源供給・機体操作にしても、現在は有線の水中ドローンが主流となっています。

しかし、これにより活動範囲が限定されてしまう一方、無線の水中ドローンであれば、バッテリーの持ち時間や通信可能な距離の問題も出てくるのです。

また、現在は水中を撮影する用途として活用されることが多いものの、今後は遠隔操作できるアーム等の付属技術の進歩も求められてくることでしょう。さらには、潮の流れの早い海域でも安定した航行ができる技術開発も必要となります。

日本の水産業に求められている水中ドローン

水中ドローンを使った水産業の実現にはまだまだハードルがあるものの、水中ドローンの研究開発や成功事例の蓄積は、今後期待されているとともに、日本の水産業に携わる人々の現状を考えると緊急の課題であることはお分かりいただけたでしょう。

水産業に携わる方は、今後も水中ドローンの動向を意識してみてはいかがでしょうか。

水中ドローンにはまだまだ課題はありますが、水中ドローンと当社の持つ高度な画像解析技術を用いることで、生育状況などを画像解析で解析することもできます。また、データから診断できるものがあれば、それらのソフトウェア化も可能です。当社の技術・サービスに関するお問合せは下記よりお受けしております。

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