水中にもドローンが登場、さまざまな機種が販売され話題になっています。水中風景を撮って楽しんだり、ボートの船底や桟橋を点検したりと、用途もさまざま。これまで科学調査で用いられてきたROV(Remotely operated vehicle)と呼ばれる探査機の簡易版的な利用も進んでいるようです。空飛ぶドローンと同様、急速に機能が高度化、低価格化しており、海中でも操作可能な機種やソナー搭載の機種も登場しています。仕事での利用も視野に入った水中ドローンの導入メリットを見ていきましょう。

話題の水中ドローンでできることとは?

水中ドローンは、カメラを防水カプセルに収めて、リモートコントロールで海中を自由に撮影できるようにした無人潜水機です。水中では長距離の無線操縦は難しいので、多くの機種で有線リモコンが採用されています。

深海探査からレジャーユースまで広がる用途

国立研究開発法人・海洋開発機構(JAMSTEC)は、有人深海調査船「しんかい6500」で有名ですが、世界トップクラスの潜航深度を誇る「かいこう」(潜航深度7,000m)や、超高感度ハイビジョンを備えた「ハイパードルフィン」(潜航深度4,500m)などの無人探査機が活躍しており、自律海洋観測を目的にマリン・ロボット「MR-X1」も開発しています。いずれも、有人調査船では不可能な深海域や、海底地形が複雑で危険な深海の調査を目的としています。水中ドローンはこうした海中探査機の簡易版と言えるでしょう。

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ソナーや追尾システム搭載する高機能機も登場

60-100m潜れる水中ドローンが多い中で、パワービジョン社のパワーレイの潜水深度は30mと潜水能力では見劣りしがちですが、4時間の連続潜水時間、深度精度±10cm、魚群探知機を搭載できるところが注目点です。
魚群探知機は「水深80mまでの範囲で、魚群の位置、大きさ、深度などの情報、また水温、水深と地形などの情報を正確に探知し、リアルタイムでVision+というアプリに送信できる」と同社ホームページでスペックを紹介しています。0.6m-80mの水中地形が観測可能とあり、水中カメラと合わせて利用すれば、潜水作業の簡易的な事前調査にも利用できそうです。

Power Ray(出典)Power Ray

一方、アイバブルカメラ社のアイバブルはダイバーが2016年にクラウドファウンディングで資金を集め開発した水中ドローンです。それだけに水中での撮影のツボを心得ており、空中ドローンのフォローミーモードのような機能が装備されています。

これは、ダイバーが水中で無線コントローラーを操作して、自分を追尾・先行させたり、サークルを描かせたりと航行スタイルを変更できるもので、専属水中カメラマンを雇っているかのような映像を撮影できる一味変わった水中ドローンです。

岩などの障害物を自動回避する機能も備えており、空中のドローン並みの操作が可能になれば、水中の深場や狭い場所など先行しにくい場所を安全な場所から現場を見ながら調査することが可能になるのではないでしょうか。空中のドローンの目視飛行に近い利用方法が考えられる興味深い水中ドローンの一つです。

iBubble(出典)iBubble

水中ドローン。その導入メリットとは?

ダイバーに代わって、ドローンを水中撮影に利用するメリットとは何でしょうか。

安全に、長時間の水中調査が可能に

業務で潜水作業を実施するためには、潜水士免許が必要です。また、潜水を実施するためには送気やダイバーの安全を監視する補助員が必要です。さらに、潜水機材の手配や運搬が必要で、事前準備から実施まで大掛かりな作業になります。また、水圧の関係で、潜水深度が増せば増すほど潜水時間は短くなります。

例えば、水深10mなら200分潜っていても減圧停止なしで浮上できますが、40mだとわずか9分しか潜水できません。また、通常の空気潜水では30mを超すと窒素酔いにかかる恐れがあります。そうした危険を避けて作業時間を延ばすためには、減圧潜水や飽和潜水技術、ヘリウムなどを混合した人工空気の利用など高度な潜水技術や設備が必要となり、コストも跳ね上がります。

水中ドローンの利用では、船舶の通行を阻害しない、水域の管理者の許可を得るなど、常識的なルールを守る限り、規制する法令は今の所ありません。また、先に紹介した水中ドローンの場合、重量5Kg前後と軽量で、山奥のダム湖の調査であっても、運搬にそう苦労することはありません。

免許もいらず、潜水時間を考慮する必要もなく、安全で安価に手際良く調査を進められるのが水中ドローンのメリットと言えます。

濁った水中でも、水中3Dソナーで地形を把握

港湾やダム湖など、作業が必要となる水域の水質は決して良いとは限りません。ちょっとした潮加減や泥流の混入でたちまち視界は失われます。水中では、光より音が外部環境を知る手立てとなります。その代表が海底の状況や障害物の探知のために潜水艦で使われているソナーです。
ソナーは、発射した音波の反射速度から物体の距離を測定することができます。地上ではレーザースキャナで点群データを取得してコンピュータ処理することで3Dモデルを作成しますが、水中では音響ソナー応用した3Dスキャナでデータ収集し、水中での構造物の形状や地形を視覚化できます。
こうした水中3Dスキャナを水中写真ドローンに搭載すれば、広範囲を迅速に調査が可能で、空中のドローン同様、i-construction(アイ・コンストラクション)の実用化が進められています。

視覚化が進める業務改善

水中世界は、熱帯魚が泳ぐどこまでも透明な海を想像しがちですが、それでも数10m先が見えるかどうか。地上のように何百メートルも先を見通せることはありません。特に作業現場となることが多い港湾内では数センチ先も見えない悪条件がざらにあります。そんな環境でも、デジタルデータが取得できれば3Dモデルで視覚化して工事箇所の詳細や危険な場所を事前に知ることができ、安全管理に役立てることができます。

取得したデジタルデータをいかに利用するかが、これからの業務改善の決め手です。想画はクライアント企業のニーズに応じたソフトウェアを受注開発する会社です。水中ドローンについて検討される際に画像処理をはじめとしたデジタルデータについての疑問や課題があれば、お気軽に弊社にお尋ねください。

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