世界で最初にドローンによる民間防犯サービスを始めた国をご存知ですか?実は意外にも、ドローンの商用利用では保守的と思われがちな我が国なのです。2015年、セコムが一般家屋を対象として提供をスタートした小型飛行監視ロボット「セコムドローン」が本格的なドローン警備の誕生と言えます。

セコムドローンは、敷地内に侵入した不審車や不審者を自動で追跡し、クルマのナンバーや人の顔などを撮影するもので、2019年秋に同社とKDDIは、東大阪市花園ラグビー場周辺を警備エリアと想定した、AIにより不審人物を特定する実証実験に成功しました。その際、ドローン撮影した画像は次世代移動通信システム「5G」で伝送しています。
今後は、ソフトターゲットとして狙われやすい大規模なスポーツや音楽イベントなどの広域セキュリティー強化ツールとしてドローンの活躍が期待されています。

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AI+ドローンで拓く次世代警備

カメラを搭載したドローン

セコムドローンは、レーザーセンサーを設置した敷地内で侵入者を検知すると、3次元マップを利用して侵入者までの最短経路を割り出します。そして障害物を回避しながらその場へ急行。到着すると、顔や身なり、車の特徴などの情報をコントロールセンターに送信し、コントロールセンターから警備員への指示や警察への情報提供を行います。東大阪市花園ラグビー場で実施された実証実験は、このシステムを大幅に自動化、広域化したものと言えるでしょう。

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5Gで4K画像をリアルタイムで伝送

前項目でご紹介したラグビー場の実験で利用された次世代移動通信システム「5G」は、高速・大容量・低遅延・多接続が特徴です。現在主流である4Gに比べて通信速度は約20倍、遅延は約10分の1、同時接続数は約10倍。この驚異的な伝達能力でロボットやAIなどが自動的に処理を行うため、人の手を必要とする作業を大幅に減らせるのです。セコムとKDDIグループは、2017年に提携し、5Gを活用してIoT時代における高度なセキュリティシステムの実現に向けた実証実験を共同で推進してきました。

この実験では、KDDI のスマートドローンやセコムの自律走行型巡回監視ロボット「セコムロボットX2」を使用し、警備員に装備したウェアブルカメラなど複数のカメラで広い警備エリアをカバー。各カメラが捉えた高精細4K映像を5Gでセコムの移動式モニタリング拠点へ円滑に伝送できることが実証されました。5Gで高精細の映像がスムーズに伝送できるようになったことは、行動認識AIでのスムーズな解析が可能になり、迅速な警備対応に繋がることを意味します。

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不審者をドローンの映像からAIが抽出

イベント会場など広大な敷地に集まった人の中から肉眼で不審者を特定することは至難の業で、その自動化は警備の効率化やセキュリティー強化にとって重要な課題でした。
KDDI総合研究所は、カメラ映像のみで人物の動きや姿勢を認識可能にするAIを開発しています。4K映像から検出した人物の18か所の骨格点を深層学習により抽出し、骨格の動きから人物の詳細な動きを認識。倒れている人や不審な行動を取る人の動きを自動検出するものです。東大阪市花園ラグビー場で行われたセコムドローンの実験では、ドローンから約50m離れた複数人を同時に認識し、行動解析をすることができました。

東京オリンピックや大阪・関西万博など、今後大規模なイベントが数多く予定されている我が国にとってセキュリティーの強化は急務であり、ドローンなどの監視ロボットが果たす役割はますます重要性を増していきます。

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AIが拓く超スマート社会、Society 5.0

「Society5.0(ソサエティ5.0)」という言葉はご存知でしょうか?Society5.0とは2016年1月に内閣府から発表された科学技術政策のひとつで、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)の間における連携不足な部分を、IoTやビッグデータの活用によって解決することを目指す計画のことです。
そんなSociety 5.0では、全ての人とモノが「IoT(Internet of Things)」で繋がります。政府広報動画「Society5.0未来の日本の姿」ではAIを装備した冷蔵庫と会話し、夕食のレシピを相談したり、登校前にスマートスピーカーを使ってコンビニの弁当を注文したり、クラウド決済をしたりするスマートハウスに住む高校生の日常が描かれています。

スマートハウスが現実に。広がるAIの用途

Society 1.0狩猟社会、Society 2.0農耕社会、Society 3.0工業社会、Society 4.0情報社会、そしてSociety 5.0が新しい社会、超スマート社会です。5Gによる高精細画像のリアルタイム送信と、AIが自動画像解析するというドローン広域警備の実証実験は、「フィジカル(現実)空間からセンサーとIoTを通じてあらゆる情報が集積(ビッグデータ)され、そのビッグデータを人工知能(AI)が解析することで、高付加価値を現実空間にフィードバックする社会」(内閣府資料)を目指すSociety 5.0への一つの起点と言っていいでしょう。

AIを身近に、シンプルに

AIは、学習に必要なデータを準備し、適切なデータ投入を行わなければ良好な結果は得られません。そうしたデータ確保やデータ調整の難しさが、AI利用の課題となっています。弊社は、その課題を整理して高度な技術をシンプルで使い易いソフトウェアとして開発する会社です。

AICam(アイキャン)は、検査・検品用途に焦点を絞ることで、写真を撮影するだけの手軽さで学習と判定を可能にした特化型AIソリューションです。昨今の顔認識技術は高い精度で認識しますが、マスクやヘルメット等で顔を隠した人物は検出が困難です。一方で、不審者は特定を避けるためにそうした対策をとることが多く、「マスクをしている」といった特徴や、「制服を着ていない」などを学習させることで侵入者検知が可能となります。

防犯用途以外でも、バッグや帽子等、自社の製品を着用している人が通過したかといったマーケティング活動にも有用です。判定結果を基にパトランプを点灯させたり、集計システムにデータを送付したりするなどの幅広い連携が考えられます。
そのほか、コンベアを流れる商品の目視検査、交通量調査等のカウンティング業務、野生動物の生態調査・害獣対策を目的とした巡回調査など、長時間・長期間に及ぶ監視業務の自動化にAICamが効果的です。

貴社のドローン利用における目的をお話しください

弊社は、ドローンの利用を中心に、データ解析ソフトを受注開発する会社です。ドローンや各種センサー、AIなどを使って実現したいお考えがありましたら、実現の可否を問わず、お気軽にご相談ください。