警察においても幅広いドローンの利用が進んでいます。我が国の警察におけるドローン利用は、捜索、救助が中心です。
民間の協力が得やすい分野でもあり、警察署と空撮会社やドローン学校などドローン事業者との協力協定が進んでいます。

海外では、犯人の追跡、監視、警告などの防犯、治安現場での利用などさらに一歩進んだ利用が始まっています。
国内外の事例から、警察におけるドローン利用の可能性を見ていきましょう。

各地で進む警察署とドローン運用会社との災害連携協定

「警察」「ドローン」「民間」「協定」といった言葉でネット検索すると、2019年7月5日、神埼警察署と建設株式会社との間で「大規模災害発生時の警察活動におけるドローンの運用に関する協定」の締結や2019年3月28日、保土ケ谷警察署は区内で小型無人航空機・ドローン事業会社と大規模災害やテロ対策に伴う活動支援に関する協定の締結…、と驚くほど多くの検索結果が一覧に並びます。

いずれも、災害時などの有事に、民間のドローン事業者が保有する機材を提供したり、操縦を代行したりするものです。
情報収集や捜索活動に対するドローンの重要性が認識されてきた証と言えるでしょう。

救難・捜索、ドローンの機動性に注目

警察においても、広範囲の捜索活動や立ち入りが危険な二次災害が想定される場所での利用がドローンの主な用途です。

2019年10月の台風19号の影響で発生した香川県千曲川氾濫による行方不明者の捜索。7月に日光で行方不明になったフランス人観光客の再捜索。沖縄県密林で行方不明になった認知症老人捜索(2017年5月)などがその事例です。

変わったところでは、香川県警察の東かがわ警察署が実施した「空と陸からの防犯パトロール」 です。
児童の安全確保、交通事故防止のため、パトロールカーと「東かがわ防犯パトロール隊」の小型無人機ドローンが連携して、空と陸の両方から下校時通学路の安全点検を行いました。

こうした、捜索、監視に加えて、捜査分野の利用も静かにスタートしています。

2018年10月、警視庁鑑識課は、警察犬訓練施設(東京都東大和市)には、ドローンと警察犬のコラボ訓練を実施しました。想定は死体遺棄事件。被疑者の証言に基づいて上空から俯瞰撮影。不審なスコップを発見し、警察犬を急行させ、遺体を発見するといった手順で進められました。新聞報道などによると、すでに同年7月に火災現場の検証にもドローンが利用されたということです。

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赤外線センサーや呼びかけ機能など機体機能も高度に

赤外線カメラやスピーカーなどは、大型ドローンに後付け搭載することが多かったのですが、小型軽量機なのに可視光線と赤外線カメラがビルトインされ、アタッチメントでスピーカーやサーチライトが取り付けられる機種が登場しています。

赤外線センサーがあれば、夜間利用やより高度な捜索が可能となります。

海外では、監視、捜査、逮捕と一歩踏み込んだ利用が進んでいます。赤外線センサーによる建屋内に潜伏する犯罪者の位置確認、3Dモデリング技術を応用した現場検証など、ドローンのセンサー機能を活かした活用がされています。

国内においても、2020年の東京五輪に向けて高まる警察活動の中で、こうしたドローン利用が増えていくことは容易に想像できます。

海外事例、一歩進んだドローン活用

銃乱射事件の鎮圧など、警察官の生命が危険にさらされる心配のある犯罪が多い米国では、取締り現場でもドローンが活躍しています。
一方では、犯人追跡に効果的な顔認証技術ですが、米国ではプライバシー保護の問題で強い反対を受けています。

上空からSWATを支援。迅速逮捕や隊員の安全確保に貢献

LAPD(ロサンゼルス警察)は、2019年7月に1年間のテスト運用を経て、ドローンの正式利用が始まりました。

2019年1月9日、コリアタウンにあるアパートの2階建に立てこもる容疑者の様子を把握するためドローンがはじめて使われました。
容疑者が立てこもる部屋の中の様子がわからず9時間続いた膠着状態も、ドローンが映し出す動画で容疑者の状態が確認できたことで、安全かつ迅速に処理できたと同署は発表しています。

また、武器を持って住宅に立てこもった三人組の逮捕でも空撮映像が役立ちました。
こうした功績があるにもかかわらず、本運用するにあたっては、プライバシー保護論者の激しい反対にあい、人質の状況把握、爆弾部隊の対応、射撃活動家の対応、その他の緊急事態などに利用が制限されることになりました。

英国ウエスト・ミッドランズ警察は、犯罪現場の撮影、サッカーの試合や抗議活動の監視に利用しています。また、公園、運河、航路など立ち入りが難しい大規模なエリアでの犯罪者捜索や、行方不明者の検索を支援するためにも活用しています。

英国グリムスビーでは、リンカシャー警察が赤外線センサー搭載のドローンで、意識不明で倒れていたドライバーを真っ暗闇の溝の底から奇跡的に発見したと地元メディア・グリスビー・ライブが伝えています。
彼は近くの国道で事故を起こし、朦朧としながら歩いているところを目撃されていたため、警官がすぐに徒歩で捜索を開始しましたが発見することができませんでした。そこでドローンを利用したところ、数分で発見できたと報じています。

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現場検証でセンシング機能を活用

ドローン空撮データの交通事故の現場検証での活用も始まっています。米国インディアナ州ティペカヌー郡の保安官事務所では、2018年にドローンを活用して20回の衝突シーンをマッピングしたとウェブマガジン・フューテュリティは伝えています。

事故現場をドローンで撮影して、事故車の位置関係などを測定したデータから3Dモデルなどで再現するというものです。
事故の現場検証は普通2-3時間かかるものですが、ドローンでスキャンするとわずか、5〜8分で完了します。「事故後の通行止め時間を60%削減できる」と担当した保安官が語っています。

長時間の交通規制が必要なくなり、地域経済にとっても大きなメリットがあります。

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広がるドローンのセンシング機能

ドローンの利用方法は、警察においても、「空飛ぶカメラ」から「空飛ぶセンサー」へと重点を移しているようです。

今回ご紹介した交通事故現場の検証で使われる技術は、航空測量技術を応用したものです。ありふれたカメラでとらえた連続写真をソフトウェアで処理することで、図面や地図など書類としてでも、3Dモデルとしてでも、必要に応じた形で利用できるようになります。

弊社では、そうしたソフトウェアをユーザーのご要望に応じてワンオフ開発する会社です。ドローン利用での疑問や課題をお持ちなら、まず弊社にご相談ください。