平成25年(2013年)に123億円だった木材の輸出額は、平成30年(2018年)には351億円と、5年間で283%もの高い伸びを見せています。海外需要をさらに拡大し、その勢いを国内需要に結びつけようと木材製品の高品質化が進められています。
その中で原木の付加価値を高める手立てとして注目されるのがブランド化です。一定の規格水準を設け、それを満たす高品質な製品に原産地名を冠することで認証し、市場価格を向上させるのが狙いです。その基礎となる原木の形状といったデジタルデータを取得する手段として、フットワークの良さや、用途に応じたセンサーが搭載できるドローンの汎用性が注目されています。

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品質認証で日本の森を宝の山に

原木の品質は、山が違えばずいぶんと異なります。青森ヒバ、天然秋田スギ、木曽ヒノキは、天然林の日本三大美林。吉野杉、天竜杉、尾鷲ヒノキが人工林の三代美林です。産地名が高い商品性の証となってきました。近年、産地名をさらに絞り込んでプレミアム化を推進して商品価値の向上を図る動きが活発化しています。

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ブランドネームが品質を認証

その代表例の一つが「信州プレミアムカラマツ」です。「信州プレミアムカラマツ」は 長野県産の林齢80年生以上の高齢級カラマツ人工林から径級30センチ以上で、素材の日本農林規格(JAS)の1等、2等に相当する良質な大径材丸太を厳選して販売するものです。
2017年秋の初売りでは、105年生の霊仙寺山国有林産材が最高4m×38cm 38,600円/m3と通常の2倍以上の価格で、民有林では84年生の小海町産材が6m×30cm 32,000円/m3と高値で落札され話題となりました。
他にも伊勢神宮の式年遷宮など多くの文化財で使用されている「〇高〇国木曽ひのき(マルコウ マルコク キソヒノキ)」(※正式表記は「高」と「国」をそれぞれ〇で囲う)や愛知森林管理事務所管内の段戸国有林で、100年を超える林分から生産された高品質な丸太を「段戸SAN」と表記し、ブランド化している例があります。
※齢級とは、林齢を5年の幅でくくった単位。苗木を植栽した年を1年生として、1~5年生を「1齢級」と数える。

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森をデータ管理し、効率向上

我が国の森林面積は国土面積の約3分の2にあたる2505万ha。うち約4割に相当する1020万haは人工林で、その半数が一般的な主伐期である50年生を超えています。我が国の森林が宝の山となるかどうかは、高齢級の大口径原木のプレミアム化にかかっていると言えそうです。

こうした高齢級の人工林が多い理由の一つが国産材の価格低迷による伐採の手控えです。そのため、間伐等の手入れが行き届いていない森林も多く見受けられます。伐採の手控えには、原木の太さや樹高、健康状態などの商品性の調査が必要です。
また、生育場所の正確な位置の確認、大きく育った樹木を伐採し搬出するためのルート調査も効率化と収益の向上に欠かせません。それは商品の品質、在庫状況、出荷ルートを確認することであり、しばらく停止していた工場の再稼働におけるメンテナンスや生産・在庫管理と同様と言えるでしょう。

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ドローンで良質木の選別や搬出ルート調査を効率化

ドローンによる森林調査

木を健康に育てるためには間伐が欠かせません。そのためには、どの木を伐採し、どの木をプレミアム材とし育てるかの選択が必要です。
その判断の基礎データとなるのが幹の太さや樹高などです。この調査は測樹と呼ばれます。まず、対象エリアの測量を行い、場所を確定した上で巻尺などを1本1本計測し、記録していく大変な作業です。近年は、空中写真測量やレーザースキャナの利用などによる省力化が進んでいます。その中で計測機器として注目されているのがドローンの活用です。

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普通のカメラでの森林調査を可能にするSfM

ICT 技術を積極的に活用し、業務の効率化を推進しようと林野庁は平成31年3月「UAV立木調査マニュアル」を公開しました。ドローンで撮影した空撮写真から立木本数や木の直径、高さ、材積を推定するための解説書です。その手法として複数枚の写真から三次元点群データを取得するSfM(Structure from Motion)を用いた画像解析を紹介しています。SfMとは、複数枚の写真から被写体の形状を復元する技術です。

下記リンク先にある「Drone-Biz(ドローンビズ)」関連ページで詳しく解説していますが、森林のように対象物体が大きく、離れた場所から写真を撮影できる条件下では、3D計測技術の中でもこのSfM/MVS(Structure from Motion / Multi-View Stereo)技術が適しています。「UAV立木調査マニュアル」で紹介しているドローン「Phantom4 Pro」に搭載されているカメラでよく、低コストで導入できる魅力的なリモートセンシングの手法と言えるでしょう。
同ドローンに搭載されているカメラは、有効2000万画素、1インチCMOSセンサーに、35mm換算24mm・f/2.8~f/11 オートフォーカスレンズを備えた高級コンデジ並みのスペックです。

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空撮画像から樹種別エリアマップを作成、森を商品倉庫に

レーザースキャナをドローンに搭載すれば、Light Detection and Ranging (LiDAR)を用いて、下草などの影響を排除した3Dマッピングが可能です。これは、光を用いたリモートセンシング技術の一つで、パルス状に発光するレーザー照射に対する散乱光を測定し、遠距離にある対象までの距離やその対象の性質を分析するものです。

幹の太さや高さだけでなく、枝振りや幹の曲がり具合など樹形、樹種までデータ化が可能です。ドローンを活用すれば、森林での作業エリアの位置、面積などの計測、樹種別分布、分布域の生育状態、木ごとの樹経などを迅速に調査し、デジタルデータとして記録できます。データの連携で、知識不足による損失防止にも役立ちます。価値を知らずにクロガキや赤ケヤキなど高価な樹種が雑木としてチップにされたり、燃やされたりしているそうです。こうした樹種を見つけたら、場所や樹形の記録を山林のエリアマップと連携させておけば、過って雑木として伐採される心配がなくなります。
製材所やユーザーとのデータの連携で、多様な注文に即応できる体制が整います。いわば、森の商品倉庫化です。

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利用目的に応じたワンオフソフトで確かな業務の効率化を

記事で取り上げたように、ドローンに搭載するセンサー次第で取得できるデータが異なります。また、それらデータの解析方法によって得られる成果も変化します。調査する対象や調査の目的は何か、利用目的に応じたセンサーや解析ソフトの選択が、信頼性と妥当性ともに高い成果を引き出します。

弊社は、ドローンセンシングで取得したデジタルデータを活用したシステムづくりを得意とし、クライアントのニーズに応じてソフトウエアを受注開発する会社です。ドローンの活用方法やデータ解析に関する課題や疑問などがあれば、お気軽にお問い合わせください。