新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020年は多くの海水浴場で海開きが中止されました。監視員やライフセーバーがいない海での遊泳はとても危険で、自粛の呼びかけに応じずビーチに出かけて事故や事件に遭遇するケースが多発するのでは、と不安の声が上がっています。
また、ソーシャルディスタンスが求められる中、新型コロナウイルス感染拡大収束後も、3密を避けるため入場者数の制限なども考慮しなければならず、これまで通りの海水浴客数を収容できるかどうかも収益に関わる大きな課題です。そうした厳しい状況下でも、ビーチの安全管理の品質低下は許されません。
そこで広い範囲を監視や捜索できるドローンが、その特徴を活かしてビーチの安全管理を効率化する手立てとして運用が始まっています。
サメの接近監視や捜索救助にドローンがビーチで活躍
オーストラリアのライフガードは、既にサメの襲来監視や遊泳者への注意喚起、助けを求める遊泳者への救命フロートの投下などにドローンを利用しています。
高所から捜索、素早く救命フロートを投下
2018年1月18日にオーストラリアのニューサウスウェールズ州レノックス・ヘッド海岸沖で、潮に流されて助けを求めている遊泳者に対して、ドローンで救命フロートを運搬・投下し救助しました。これは、ドローンが海難救助に役立った世界で最初の例として話題となりました。地元紙は、遭難の報を聞いたライフガードが直ちにドローンを飛ばし、70秒程度で救命フロートが投下できたと報じています。
AI搭載システムでサメを90%の精度で識別
この救助劇はニューサウスウェールズ州が、サメ被害から遊泳者を守るために導入することになったWestpac Little Ripper Lifesaver 社のドローンで運用練習している最中の出来事でした。同社のホームページによると、このドローンにはShark Spotterと呼ばれるAIソフトウェアが搭載されていて、サメとその他の海洋生物を瞬時に区別し、サメであれば搭載されたサイレンで遊泳者に危険を知らせるというものです。
肉眼では20~30%しか生物の識別を判別出来ないのに対して、このシステムの判別精度は90%とのことです。サメのほか、イルカ、エイ、クジラなどの海洋生物16種を識別でき、サーファー、スイマー、ボート、人間、および水中にある他の漂流物との識別も可能としています。
カリフォルニア、サンタモニカ湾沿岸のライフガードの活躍を描いた米国のTVドラマ「ベイウォッチ(水難監視救助隊)」。今、リメイクされたら、AIドローンが、欠かせないアイテムとなりそうですね。
国内でも実用化に向け、コンテストや実証実験も
諸外国だけではなく、我が国でも海難救助などへのドローン導入の機運が高まっています。
ドローンで人命救助コンテスト、特別賞は自律飛行、画像解析に
2018年8月、日本で初めてのドローンによる人命救助コンテスト「銚子マリンレスキューチャレンジ2018」が開催されました。約1.5km沖合に設定された1km四方の海域から遭難者に見立てたマネキンを発見する課題と、マネキンの近辺に設置されている木枠を標的に救命胴衣を投下する2つの課題でタイムと精度を競うというものでした。
大会には全国から6チームが参加。「発見」では7分39秒78のDJI認定ストア新宿(2020年4月に閉店)が優勝。「救命胴衣の投下」では東西ドローンが8分39秒で勝利しました。東西ドローンとして参加した「エックスD.ドローン仙台」のホームページ上で、本コンテストについて以下のように振り返っています。「本コンテストについて、海面の反射や映像の乱れなど伝送面の障害で、遠隔操縦が難しかったこと、また、浮いている木枠が見づらく、どこにあるのかわからずに苦戦を強いられるチームが多かったこと」など今後の課題を報告しています。
コンテスト参加者の感想からもわかる通り、海上を漂流する遭難者を肉眼で発見することは相当困難であり、海外事例のようにAIを搭載したドローンセンシングが有効です。
海上保安庁、ドローンによるAI捜索を実証実験
海上保安庁は昨年9月から、海難事故の救助活動にAIを活用する実証実験を始めています。これはドローンで空撮した映像中の人物が、救助を必要としているかどうか検出しようとするもので、弊社「想画」の技術が利用されています。
人は救助を求めている時には、顔・手・足等に特徴的な動きが見られます。実験では、 救助が必要な人物のポーズの写真を多数撮影し、その特徴的な動きをAIに学習させ、以後に撮影した写真から同様の特徴を持った人物像を検出することで、要救助者を迅速かつ正確に割り出すものです。
弊社は、物体認識や人物動作、行動解析などに早くから取り組んでおり、工場における異物・エラーの検出をはじめ、侵入者の特徴検知による防犯利用、交通調査や害獣監視業務などの自動化を実現してきました。今回の海上遭難者の捜索に役立つソフトウェア開発は、そうした技術をベースにしたAI技術利用の新たな挑戦です。
AIドローンが自動判別、人命救助をスピードアップ
記事で見てきたように、今やAIドローンの利用は、海上など特殊な環境での人命救助になくてはならない技術となりそうです。弊社は、ドローンセンシングで取得したデジタルデータを活用したシステムづくりが得意です。山林、海上問わず、さまざまな条件下で蓄積してきた経験をもとに、クライアントのニーズに最適なソフトウェアを一つ一つ丁寧に受注開発いたします。ドローンの活用方法やデータ解析に関する課題や疑問などがあれば、お気軽にお問い合わせください。