近年、多岐にわたる分野で実用化が進められているドローン等の無人機ですが、農業の分野においてもそれは顕著に現れています。
米国を始めとして本格的な食糧生産国は栽培農地が膨大であり、人の手でその全てを管理することは非常に困難でした。膨大な土地へ小型飛行機によって農薬を散布する姿は、TVを通して一度は見たことがあるかと思います。
しかし、この様な従来の方法では様々な問題がありました。例えば、農薬を過剰に散布することで、農地周辺の漁業に被害が出ること等です。
問題解決の手段として注目されるドローン
こうした問題を解決する手段として、ドローンに注目が集まっています。
農場主はドローンを自分の農場の上空に飛ばします。飛行を終えて戻ってきたドローンには飛行中に高感度カメラ、マルチスペクトルカメラ、サーマルカメラによって撮影された映像が記録されています。
これによって、その日毎の農場データを確認し、データとして蓄積することで、現在の農場の状態をリアルタイムで追跡することが可能になります。
また、これまで農場全体に大量に散布していた農薬を必要な場所だけに的確に散布することが可能になるため、環境負荷の低減や農作物を育てるための投入コストを下げ、最終的には食品の価格も抑えることができるようになることも期待されています。
ドローンが農薬散布を担う
近年日本でも、農薬散布用ドローンが登場し、労働作業の省力化や機動性の高さから改めて、ドローンへの関心が集まっています。
新潟市では高品質米の生産や収穫量の向上、労力削減を目的としたドローンの活用を始めています。
水稲の栽培管理の強化
ドローンで撮影した水田の空撮画像の処理・解析を行うことで、病害虫・雑草の発生状況把握、植生分析・施肥時期・収穫適期の予測を行い、産地間競争に打ち勝つ高品質米の生産や収穫量の向上、労力削減を目指す。引用: 新潟市役所
また、夜間に無農薬で害虫を駆除する世界初の機能を搭載した農業用ドローンがオプティムによって開発され、国立大学法人佐賀大学農学部及び佐賀県農林水産部との連携で、夜間の無農薬害虫駆除を目指した実証実験に成功しています。これにより、農作業への負荷が減り、減農薬へとつながっていくことが期待できます。
北海道ではドローンを活用した農作物育成栽培実験も進められています。
ドローンに赤外線センサー等を積み、空中からの様々なデータを収集することで、病害虫の早期発見、また、最適な場所やタイミングで農作業を行うことができるようになるため、きめ細かな農場の管理が可能になり、収量と品質の向上及び環境負荷を軽減する精密農業の実現に一歩近づきます。
着実に進む精密農業
精密農業とは
農地・農作物の状態を良く観察し、きめ細かく制御し、その結果に基づき次年度の計画を立てる一連の農業管理手法であり、農作物の収量及び品質の向上を目指します。
今後、ドローン技術の進歩により、収量の増加・品質の向上・低農薬化が実現していくことは、私たち消費者にとっても有益となるでしょう。